2015年03月27日

3年目の春

3年目の春
クリニック中庭の春は「黄色」で始まります。
先月末から膨らみ始めたサンシュユが開花。




足下では
3年目の春
朝日を浴びる水仙、後ろには紫のクリスマスローズ。
来週にはムスカリの花やコヒガンザクラも加わり彩り豊かになりそうです。
夜間透析が終わる頃、南天に見えていたオリオン座が西寄りになってきました。季節は冬から春に移ろうとしています。




今月中旬まで頻繁に訪れていた鳥
3年目の春
「ヒヨドリ」糖分を好むようで、庭に果実を置くと良く見られる鳥の代表格。




そしてもう一種
3年目の春
「ムクドリ」かつては害虫を良く補食するため益鳥とされていましたが、最近では大群をなして都市部の公園や校庭の高木、街路樹に集まり、騒音や糞害で害鳥扱いされることが多くなりました。

両者ともストックしてあったリンゴが無くなると見かけなくなりましたが、むしろ通年で顔を出すスズメやキジバトの出現頻度が高くなりました。





来週には開院3年目に入ります。今月初旬には関東厚生局と県による保険診療に対する「新規個別指導」が実施されました。医院を開業し保険診療を行うと概ね2年以内に行われる指導です。予め指定された10名分の患者さんのカルテを初診時から全て(およそ2年分)を、指定された連続二ヶ月分の関連書類とともに会場に持参し指導官等による点検を受けます。一般外来の患者さんならば月1回の受診が標準ですが、透析の患者さんは月平均13回のため、持ってゆく書類も単純に13倍とはなりませんが、それでも膨大な量になりました。

透析に限らず保険診療は決められたルールの範囲で行われます。血液透析では一般的に自費負担額の20倍以上のお金が税金を担保とした社会保障財源から支払われます。従って治療の内容や根拠は正確に記録されている必要があり、ルールの範囲内で最大限効率的な治療を行う義務が保険医にはあります。いいかえれば、第三者から見ても妥当性が容易に認められる透明性の高い医療行為が求められます。当クリニックでは毎月、検査結果の解析と治療への反映はかなり綿密に行い、結果は患者さんに説明し、スタッフ全員で良い点の維持と改善点のサポートを行っています。これらを客観的に記録し初めて「入院中の患者以外の慢性維持透析患者に対して検査の結果に基づき計画的な 医学管理を行った場合に、月1回に限り算定する」とされる慢性維持透析患者外来医学管理料の算定条件が満たされると考えています。このような考えから診療の記録はマメに行ってきた事もあり、件の個別指導では特段不備を指摘されることもなく結果の通知を待っているところです。(逆に管理が厳しくて患者さんが付いてこれないか・・・と指導官に心配されてしまいました)



今月の自己管理指標(治療指標)
3年目の春
貧血(Hb)、リン(P)ともに90%以上の達成度を維持しています。1月で80%を下回ったPTH(副甲状腺ホルモン)も内服薬の調節を行った結果、リン値の上昇を抑えつつPTH値の許容内への低下が進みました。

独自指標ではKt/V>1.6が97%と新規導入間もない方以外は概ねこの範疇に入っています。この高効率を支えるのが高血流であり平均300ml/min以上を維持しています。平均Hbの低下もなく造血ホルモン(ESA)使用量は低値を維持しています。β2MGは24mg/Lに低下しました。栄養指標であるアルブミンと蛋白摂取量の指標となるnPCRが若干低下しているため、栄養管理について働きかけの強化を考えています。







クリスマスローズ(白)
3年目の春
栄養と運動は不可分であり当クリニックでは「元気に通える透析」を目指して両者を一体的に進めようと考えています。今月は西澤看護師が東京で開催された「日本腎臓リハビリテーション学会」に参加し、透析中の運動療法や栄養状態の評価について知見を深めてきました。栄養指導カルテも個別に整理し直し、今後は管理栄養士を交えたカンファレンスや運動処方によりきめ細かいアプローチが出来るように計画を練っています。

また十分な栄養を摂るには口腔内環境が大切であり、口腔ケアや歯科による治療介入の必要性が指摘されています。口腔ケアにより誤嚥性肺炎の予防や残存歯数の維持にもつながることから患者さんの歯科受診状況の把握と受診歴のない方には積極的な歯科受診紹介を展開したいと考えています。2013年6月の透析会誌では対象とした透析患者の96%に口腔ケア、治療が必要であったとの報告もあり、歯を失わないための口腔ケアの重要性が指摘されています。

味覚異常、歯周病、口腔内乾燥などお困りの方は是非、ご相談下さい。





テラコッタの寄せ植えも春の花に入れ替えました。
3年目の春
個別指導の指導官は診療科は違いましたがかつての上司でした。当時既に透析室管理を主な仕事としていた私は、厳密な透析治療が患者さんの長生きにつながるとの思いから透析治療に対する管理・指導も今より厳しかったかもしれません。結果として合併症の発生率や粗死亡率は低下しましたが、周りには「怖い管理・指導」と映り「患者さんが付いてこられない・・・」の言葉になったものと感じました。医学的には正しくても、治療の主体である患者さんの生活まで思いが至っていなかったわけです。

透析は原則週三回、盆暮れ正月なく通院していただかなくてはなりません、つまり患者さんの生活そのものが治療と不可分に位置づけられているのです。故に単純に厳しい管理だけの透析では意味がないと、今では考えています。なるべく制限のない食生活になるように透析条件や内服薬を最適化すること、何でも気軽に相談出来る雰囲気の透析室にすること、全てのスタッフがどんな質問や要望にも誠意を持って応えることが出来るようになること、そのために勉強や情報の共有を惜しまないこと。あくまでも透析室の主役は患者さんであって、我々スタッフはサポーターであること。開院3年目を迎えて、改めてこの原点を忘れないように努めたいと思いました。




3年目の春

須坂 腎・透析クリニック



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Posted by Kidney at 19:35│Comments(0)ひとりごと
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