2016年01月29日

暖冬一変雪降り積もり

暖冬一変雪降り積もり


「暖冬」という表現が懐かしくなるような月後半でした。気温も相応に低下し平年より数週間遅れてインフルエンザの流行も本格的になってきました。急性胃腸炎の症状を訴える方も一段増えた印象です。




暖冬一変雪降り積もり
雪を片付けるそばからまた積もってゆく・・・この日は何度雪かきを手伝ったことか(汗



そんな雪の残る1月24日(日)松本で開催された第1回信州HDFカンファレンスに出席しました。高齢者のHDFに関する講演では、透析量を高く維持して小分子を積極的に除去し、食事制限をなるべく緩和して栄養状態を維持させることつまり「やせを放置しない」ことが大切であると強調されていました。血液透析患者の予後不良原因のツートップである心不全と感染症、特に後者に対して栄養状態を維持して免疫力を落とさないことがリスクの回避につながるわけです。感染症予防としての口腔ケアやフットケアについても言及がありましたが、いずれも当院で活発に取り組みが行われています。今年は歯科定期受診率を80%程度までアップさせたいと考えており、今月は歯科への通院手段に困っていた患者さんに対し送迎サービスのある歯科を紹介し受診していただきました。季候が良くなる春以降に本格的に受診促進をすすめます。カンファレンスでは神應透析クリニックの神應先生から、積極的なオンラインHDFの施行でβ2MGの除去を行う有効性について発言がありました。特に透析後のβ2MGを5以下にすることで透析アミロイドーシスの発症予防や悪化防止に効果があるとのことです。当院でも透析前のみ測定していたβ2MGを前後で測定し、除去率の検討も行いたいと考えています。併せて栄養状態の良い方には3.0平米のヘモダイアフィルターの導入や、体制が整い次第透析時間の延長も順次提案したいと思います。神應先生とは個人的にもお話しする機会がありましたが、前希釈のオンラインHDFでは発汗が良くなりこれは後希釈では見られない現象とのことでした。また腎移植経験を二度受けている患者さんが神應透析クリニックでインラインHDFを始めたところ、それまでのHDと比較し「移植腎が機能していた頃の体調に最も近い状態」と治療の感想を表現されたそうです。いくつかの透析方法がありますが当院でも採用している前希釈方式のオンラインHDFは実際の腎臓に現状では最も近い血液浄化療法である可能性が示唆されます。



暖冬一変雪降り積もり
先月、神奈川県の医療法人から新たに造設する透析クリニックの設計の参考のため施設見学をしたいとの連絡をいただきました。そして1月の最終週に透析センター長の先生を始め事務の方、臨床工学技士の方、設計関係の方併せて6名の方が訪問されました。透析施設の空調管理の最適化を考えているとのことで、当院で採用している吹き上げ型の空調について実際の状態を見ていただきました。臨床の方々からは透析管理について熱意ある質問を頂き、主なデータはエクセル上に展開してすぐに使える形で保存していること、個々のカルテへの記録は勿論のこと受診歴や検査歴は横断的に台帳管理し見落としが無いようにしていること、全体のデータは可視化して公表し客観的な評価に耐えうる治療を常に目指すことなどをお話ししました。みな熱心な方々できっとアイデアに満ちあふれた素晴らしい透析クリニックが出来上がるのではないかと思いました。



自主機能評価指標のうち1月の治療指標の達成度です。
暖冬一変雪降り積もり

今月よりKt/v, nPCRに加えてGNRI, %CGRも毎月計算出来る体制としました。演算方法の違いから従来の計算式より若干Kt/Vが低めに、nPCRが高めに算出されます。お年越しがあり美味しいものを食べる機会が多かったためか、リンの高い方が散見されましたが9割の方は許容内に収まっています。血清アルブミンの平均値は概ね変化ありませんがnPCR, 血清リンが高かった方はほぼ全員アルブミンも上昇しており、蛋白摂取量を下げることなくむしろ維持していただき、透析条件の変更=効率アップで対応する方針としました。また摂取した蛋白質がカロリーに変換されないように、十分なカロリーの同時摂取もお勧めしています。ただし血糖値が高めの方は三度の食事でしっかり栄養を摂る一方で間食はしない「メリハリのある食事」で糖を上げずに栄養のみアップすることを目指します。GNRI, %CGRともに全体では比較的良い値となっていますが、個人差が大きいため栄養指導や透析条件の工夫など個別管理を徹底することが今年の課題の一つです。



「わが国の慢性透析療法の現状 2014年12月31日現在」より2014年Kidney Internationalに掲載された、血液透析患者を対象に透析前血清マグネシウム濃度と1年後の死亡リスクの関連について検討した報告では、2009年末調査において血清マグネシウム濃度のデータが得られた血液透析患者142,555例を解析した結果、透析前血清マグネシウム濃度と全死亡、心血管死、非心血管死のリスクはいずれもU字型であり、血清マグネシウム濃度2.7-3.0mg/dlの範囲で有意に低下したとあります。
マグネシウムの不足は高血圧やインスリン抵抗性、血管内皮障害を惹起し、動脈硬化の原因となることが知られています。一般に血液透析患者を含む腎不全の状態ではマグネシウムは高値になりやすく、酸化マグネシウム含有の下剤の使用は推奨されていません。連用による高マグネシウム血症から不整脈や呼吸抑制を来たした死亡例の報告もあり、むしろ禁忌とされています。一方で当院が行っているような高効率の透析によりマグネシウムが血清から積極的に除去された場合に、むしろ低マグネシウム血症になっている可能性がないか検討してみました。きっかけは腎内科クリニック世田谷の菅沼信也院長のブログに同様の記事が載っていたことにあります。

暖冬一変雪降り積もり


暖冬一変雪降り積もり
平均値はいずれも2.5mg/dl以下でありしかも減少傾向にありました。マグネシウムの濃度別分布を見ると約64%の患者さんが2.0≦Mg<2.5とやや低めのカテゴリーに位置しました。今後、当院でも血清Mgをモニターしながら少量のマグネシウム補充療法を検討したいと考えています。また血清マグネシウムが比較的高かった方々は何れもnPCRやアルブミン値、GNRIやBMIといった栄養指標が高い印象でした。栄養指導の中でも豆類、魚貝類や海藻類といったマグネシウム含有量の高い食品を紹介したいと思います。




暖冬一変雪降り積もり

1月のブログなのでそれらしき写真を一枚、1ヶ月はあっと言う間です!




暖冬一変雪降り積もり
FBでは既にアップしましたが、育休でお休みしていた看護師さんが今月から復帰しました。ブランクを感じさせないテキパキとした仕事ぶりで、早くもトップギアで活躍中です。


来週には臨床工学技士さんが1名入職、4月には更にスタッフ増員の予定です。多くの患者さんに可能な限り安全・安心で確実な透析を快適な環境で提供することを目標にスタッフ一同今年も頑張ります。


須坂 腎・透析クリニック



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Posted by Kidney at 20:32│Comments(0)ひとりごと
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