2021年09月26日

リコリスの季節、ワクチンの社会的側面

リコリスの季節、ワクチンの社会的側面
残暑を感じる9月半ばでしたがリコリス(曼珠沙華、彼岸花)の花茎が現れ、日に日に伸長して花弁を広げました。



リコリスの季節、ワクチンの社会的側面
例年最も早く咲くのが黄色のリコリス(ショウキラン)。




リコリスの季節、ワクチンの社会的側面
続いて白、紅と開花し秋の訪れを告げているようです。




今月の治療指標の達成度です。
リコリスの季節、ワクチンの社会的側面


リコリスの季節、ワクチンの社会的側面

日本透析医会の主要項目は全て90%以上の達成度となっています。今季は新規導入の透析患者さんが例年より多く編入されましたが徐々に透析効率を上昇させています。それに伴いカリウムやリン値が低下し透析導入以前の食事よりも生野菜や果物、蛋白質摂取の増量が可能となります。
また高カリウム血症を恐れて生野菜や果物の摂取が中々増えないケースもあります。透析後カリウム値が3mEq/Lを下回らないように透析効率を落とす事もあり、一方でリンやβ2MGが高い場合はカリウムが律速段階となり透析効率を上げられず、他の尿毒素の除去が制限されてしまうことになります。
人の血液にはカリウムに対する優秀な緩衝機能があり一度にたくさんのカリウムを摂取しない限り、心停止に至るような重い高カリウム血症にはなりにくくなっています。果物が美味しくなる季節、透析患者さんには是非小分けにして毎食のデザートに適量の季節の味覚を楽しんで頂ければと思います。




昨年より後発医薬品メーカーのトラブルでいくつかの医薬品の供給力が低下し出荷調整が掛かるケースが増えています。
参照:大阪府医師会の記事
https://www.osaka.med.or.jp/doctor/doctor-news-detail?no=20210915-2976-4&dir=2021

当院でも昨年に抗生物質内服にて発生する偽膜性腸炎の治療に第1選択薬であるバンコマイシン散が使えず別の薬剤に替えた事がありました。また7月から骨粗鬆症に適応のあるビタミンD内服製剤の供給不足から全てのビタミンD製剤の流通量低下を招き広範に出荷調整が行われている状態です。透析患者では骨・ミネラル代謝のコントロールにビタミンD製剤が数多く使用されます。腎不全の影響から副甲状腺で産生されるホルモン(PTH)が上昇し二次性副甲状腺機能亢進症を来すケースが多く治療にビタミンD製剤が使用されるからです。
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二次性副甲状腺機能亢進症を放置すると骨からカルシウムとリンが過剰に血液中に移行し、病的な骨折の他にも痒み、関節の痛み、動脈硬化の伸展といった影響が出てきます。

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これに対しビタミンD製剤は副甲状腺のホルモン産生細胞に直接作用し過剰な産生にブレーキを掛けます。一方でビタミンD製材は消化管からのカルシウムおよびリン吸収を促すためカルシウム濃度が高いケースではカルシウム濃度を下げる働きを持ちながら副甲状腺ホルモンの産生を抑制する薬剤(Ca mimetics, シナカルセト=レグパラ®など)を併用するほか、血清Pの高い症例ではビタミンD製剤を開始または増量する前に積極的にリンを下げる治療を先行させます。

リコリスの季節、ワクチンの社会的側面

このようにCa, P, PTHを指標にした骨・ミネラル代謝の調節にビタミンD製剤は必須ですが10月以降処方の対応が出来ない薬局が出て来ました。出荷調整は徐々に解除されることが既定となっていますが市場に十分量の製剤が出回るまでタイムラグが生じることが予想されます。当院ではビタミンD製材を内服から一部静注に変更することで対応を行います。また静注に変更したケースでは2ヶ月に1度のPTH測定を毎月として監視を強化します。

国の政策として後発医薬品への切り替えが推奨されていますが、複数の後発医薬品でしかも使用頻度の多い薬で出荷調整が行われ患者の不利益になるリスクが発生している事は由々しき問題です。後発医薬品メーカーには遵法精神の徹底と再発防止を強く希望します。



リコリスの季節、ワクチンの社会的側面
(東洋経済オンラインより)
わが国における新型コロナワクチン2回接種の割合が先月末の43.5%から55.8%に上昇しました。

ブレイクスルー感染やブースター接種の必要性も議論されていますが、重症化予防にはかなり有効であるデータが出ています。接種率の上昇とカクテル療法の在宅使用により重症化例の低減が期待され第5波に見られた病棟の逼迫と自宅療養中の死亡例も抑制されると思われます。

米国で最も権威のある医学賞であるラスカー賞の本年の臨床医学賞はmRNAによるワクチン実用に貢献した2氏に贈られることが決まりました。
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20210924-OYT1T50261/
以下、阪大宮坂昌之先生のFBからの引用です。

リコリスの季節、ワクチンの社会的側面
mRNAワクチンの研究は10年以上前から進められており、その間に動物を用いた安全性研究も十分になされていて、投与されたmRNAが子孫に伝わらないことや、受精、妊娠にも影響を与えないことが明らかにされています。
この技術は、分子生物学、生化学、ウイルス学、免疫学の過去50年の歴史の結晶ともいえるもので、サイエンティフィックなレベルでは大丈夫と言えるところまですでに研究が進んでいます 。

ワクチンには発症・重症化予防といった個人の防御の他に、集団感染を防ぐ社会的防御の側面があります。新型コロナワクチンの接種は任意ですが科学的に見て安全性は相当程度担保されており、正しい理解の元で接種を行う事は自分のためでもあり社会のためでもあると言えます。その意味でワクチン接種は社会貢献になると考えます。
ある人がワクチン接種を社会貢献と表現したところ、ワクチンを打てない人は社会貢献できないのかという反論を受けました。社会貢献は強制されるものでは無く個人が出来る範囲で自主的に行うものと考えています。ワクチンを打てる人は接種することが貢献であり、打てない人は別の手段で貢献すれば良いだけの話です。


リコリスの季節、ワクチンの社会的側面
風で倒れそうな茎に添え木を当てていたら1本折ってしまいましたが、花瓶に活けて受付に置いてみました。



リコリスの季節、ワクチンの社会的側面
小紫も実を付けて、次は金木犀の出番を待つばかりです。

当院では途中編入の方を含めて全ての透析患者の新型コロナワクチン2回接種が完了しました。また、全職員がフルワクチンの状態にあり抗体検査の結果全員で十分量の抗体を認めています。



須坂 腎・透析クリニック



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Posted by Kidney at 15:35│Comments(0)ひとりごと
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