夏至過ぎて雨音来たり水無月

Kidney

2016年06月24日 19:29


梅雨入り後も目立った雨が降らなかった北信ですが、夏至を過ぎてやっと雨音の回数が増えてきました。雨不足で貯水量が心配な関東と、地震からの復旧途上に豪雨に見舞われた熊本。平均的に降ってくれればと思いつつ、自然と向き合うには柳腰の受け身が必要とも感じます。





春の花が終わり初夏の花に移りつつある中庭の様子。





宿根草は放っておいても毎年同じ時期に同じ場所で花を付けるため、管理人の強い味方です♪




6月は学会シーズンでもあり大阪で開催された日本透析医学会と横浜で開催された日本腎臓学会に参加してきました。土曜日の診療を終えて代診の先生と入れ替わりに長野を出るため、参加出来る範囲は限られてしまいますが、座学とは違ったインパクトがあり知的刺激になります。大阪では透析患者の心血管系合併症の講演に参加しましたが、ある透析施設の新規透析導入患者を全て循環器医が調べたところ、その40%で心臓を栄養する冠動脈に狭搾病変があり糖尿病を有している方が若干頻度が高いものの、非糖尿病患者との有意差(統計学的な差)は無かったそうです。新規透析導入患者の平均年齢が70歳に到達しつつあり、危険因子である糖尿病の有る無しにかかわらず高い頻度で心血管病変が存在している可能性が高いことは、日常診療でも常に意識しなければならないと感じました。特に透析患者では一般的に見られる血管の最も内側(内膜)に加えてその外側にある中膜の石灰化が強く、治療後の狭窄再発にも関与していることから、カルシウムおよびリンの管理は積極的に行うべきと思います。末梢動脈疾患(PAD, 特に下肢の動脈障害)では放置した場合5年生存率は大腸癌と同程度に低いことも強調されていました。また虚血病変はわずか数日で足指切断が必要なレベルまで悪化することもあり、迅速な取り組みが必要であることも述べていました。これらの内容はフットケアチームに共通認識として伝え、今年度より始めたABI値や足趾における傷の有無でリスク層別化した経過記録を十分に活用するように、スタッフ全員で情報共有しました。





桜の木の下草として植えた紫陽花、こちらはピンク色です。




今月の各種治療指標とその達成度です。






隔月測定のβ2MGとPTHは5月のデータです。
今月も高血流高効率のしっかり透析でspKt/V>1.8の方が75%を越えました。一方、急に暑くなり食欲が低下し血清アルブミンやnPCRの低下した方もおり、数値によっては血流量を減らす、または膜のダウンサイジングで対応しました。鉄剤の投与を週1回、月5回以下として数ヶ月経過しました。それまでの週2回投与と比較しフェリチン値の上昇が緩やかでコントロールし易い印象です。これからは湿度も気温も上がり食欲が減退する時期でもありますが、むしろ夏バテ予防にしっかり食べることを推奨し栄養状態の維持に努めたいと考えています。心血管病のところでも触れましたが、リンの管理に加えてカルシウムの管理も大切です。リンに関しては引き続き添加物からの無機リン摂取を減らし、蛋白質そのものの摂取は維持・向上する取り組みを管理栄養士とも相談しながら進めます。カルシウムは含有する古典的リン吸着剤の使用量をなるべく下げて、カルシウムを含まない吸着剤に切り替えることで経口によるカルシウム負荷を軽減させる取り組みを始めました。






ナツツバキの花

いよいよ透析室増床工事が始まりました。敷地に仮囲いが出来て駐車場が狭くなったため、スタッフはクリニックの近くに3カ所確保した職員用駐車場にクルマを移しました。通院にクルマをお使いになる患者さんには大変迷惑をお掛けしておりますが、ご協力のほどをよろしくお願い申し上げます。また駐車に際して不都合がありましたら遠慮無くクリニックまでお電話ください。また工事に伴う騒音につきましては、大きなものはなるべく診療時間外に行うように施工会社と打合せをしておりますが、気になるようでしたらスタッフまでご一報ください。

須坂 腎・透析クリニック

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