雪に悩まされることが無かった前シーズンのカウンターを恐れていましたが、今季は12月始めからガツンと来ました。一度も出番の無かった除雪作業が早速入り駐車場の雪を片付けてくれました。年末年始には更に強い寒気が到来する模様です。
さすがに根雪になるほどの降雪は今のところ無く、庭の藤棚の下には敷き詰められた落葉が秋の名残です。
Johns Hopkins University, COVID-19 Dashboard by the CEESより
昨年は中国湖北省武漢に起因する新型コロナウイルスの世界的流行によりわが国も多大な影響を被りました。国内の感染状況は昨年晩秋に第3波の感染拡大が生じました。地方ではピークアウトした一方、首都圏など大都市圏では未だ感染者数の制御にほど遠い状況です。海外ではワクチンの接種が開始されましたがやや遅れて英国で感染力が高まった可能性のある変異種も報告され、新型コロナ感染症が今後どのような経過を辿るのか予見は極めて困難です。
かつて人類は日常的に感染症と戦っていました。1924年抗生物質の発見により細菌感染症に対する武器を手に入れましたが、抗生剤の効かない耐性菌との戦いは今なお継続しています。ペニシリンが発見される数年前にはスペイン風邪、1950年代にはアジア風邪と呼ばれた新型のインフルエンザ感染症が世界的な流行を起こしました。おそらく今回の武漢発祥の新型コロナウイルスもいずれは一般的な風邪ウイルスに落ち着くことが予想されます。しかしこれまでの世界的流行後の経過から定常状態に至るまで4〜5年はかかると考えられています。それまで私たちは玉石混淆の情報に惑わされず日々の生活の中で最善を尽くす事が求められます。
新型コロナウイルスの特徴を列挙します。
1. インフルエンザ並みの感染力を持つ
2. インフルエンザと異なり症状が出る前から他人に感染させる
3. 若年者では無症状か一般の風邪レベルの症状で終わることが多い
4. 高齢者や持病を持つ場合、最大インフルエンザの100倍の死亡率
5. 現時点で特効薬は無い
6. わが国におけるワクチン接種は予定されているが全国民を網羅するのは半年後以降
まとめると、透析患者さんにおいては
「インフルエンザの100倍の死亡率のウイルスがインフルエンザ並みに流行している」と言えます。更に地方において新型コロナウイルスに罹患した透析患者を受け入れる病床数は非常に少なく、集団発生した場合入院先の確保が困難となる可能性があります。特効薬も無くワクチンの普及もまだ先である以上、万全な感染予防を行い可能な限り感染しないことが大切です。そのためには、感染の成立条件を理解する必要があります。
1. 人が動けばウイルスも動く
2. 感染は密な場所で起こり、密な場所ではウイルスも密になる
3. 飛沫または接触によりウイルスは体内に潜り込む
長野県内での発症状況を見れば流行地から移動してきた人、感染予防の不十分なお店で飲食した人が家庭にウイルスを持ち込み家庭内感染が広まった事例が多発しています。その一部が医療機関や通所施設に持ち込まれ更なる集団感染につながりました。
普段生活している人以外と接するときは濃厚接触者とならないようにマスクを着用し対人間距離を意識し、残念ですがしばらくは飲食をともにしないことが求められます。三密(密集、密閉、密接)空間に感染者がいた場合、効率に多くの人にウイルスをうつすことが証明されています。換気不十分な空間、対人間距離が取れない場所を避け、例え屋外であっても人混みの中には入らない工夫が必要です。またマスクをしても三密空間で長時間過ごす、同じ空間で大声を上げる・歌を歌う人がいた場合などは感染を防ぎきれません。しかし飛沫の拡散に一定のブレーキをかける意味でマスクは有効です。更に頻繁な手洗い(石けんで30秒以上、特に指)で接触感染のリスクは低下します。部屋の湿度を50%程度に保つことも感染対策には有効です。幸い長野県は人口密度も大都市ほど高くは無く首都圏からもある程度距離があり、集団発生への対応も辛うじて出来ています。先の見通しが不明瞭な現在、個人で可能な感染対策を万全にすることで数年後「最近コロナって聞かないよね」と言える時期が来るのでは無いでしょうか。
第1波の感染拡大以来、当クリニックでは冬期の感染拡大も視野に入れて防護服を始めとする消耗品、感染対策に必要な備品を確保し備えてきました。
第2波の感染拡大前後で空間的隔離を行うための衝立も品薄でしたが、スタッフや卸業者さんの尽力により比較的早い時期に透明かつ堅牢で使いやすい物品を確保しました。
厳冬期になり種々の感染症状を示す方が多くなる事に備えて、更にもう一対購入しました。
玄関中央と第2透析室奥の個室前には足踏み式の消毒液ディスペンサーを用意しました。
採血・検査室に検体採取用のブースを設置、採血室は点滴室に移動しました。現在は鼻腔ぬぐい液を検体としたインフルエンザおよび新型コロナウイルス抗原の検査を行っています。2021年1月下旬にはSHIMADZU社製遺伝子解析装置AutoAmpを導入予定です。
現在新型コロナPCR検査は限られた機関で公的・保険適応検査として行われるか、自費で検査を行うかです。透析患者は重症化しやすく施設においてはクラスター化の危険が高く、疑われた場合迅速に対応する必要があります。またワクチンが普及し集団感染が制御された後も数年は特に精密に診断する対象となり得ます。そこで当院ではこの小規模施設型のPCR検査装置を発売と同時に手配し設置する運びとなりました。(自費検査、紹介による検査は行いません。)
院内の数カ所に二酸化炭素モニターを設置し適切な換気状態の維持に努めています。
大型の加湿器も複数箇所に設置していますが、換気と湿度の維持には難渋しています。
スタッフも新型コロナ感染症に対するガイドラインが改定される毎に通覧し、最新の情報にも積極的にアクセスし現場に反映させようと頑張っています。
安全な透析治療を継続するためクリニックとしても万全な準備を整えて長期戦に備えます。
今月の治療指標の達成度です。
先月Hb