2022年睦月、6度目の波は潮目の変わり?

Kidney

2022年01月28日 15:53


透析施設は年末年始に日曜日を挟まない限り大晦日に仕事納めをして元旦に仕事始めをします。お正月を満喫する時間的余裕はありませんが逆にペースが乱れなくて良いとも感じるようになりました。今季は雪が多く早い時期に根雪となりました。地表が雪で覆われると餌が少なくなるためか、いつもの面々が中庭にやってきます。写真は放射冷却で冷えた朝の風景、藤の枝にスズメの群生。



果物好きで頬紅のような色調が可愛いヒヨドリ。その一方ダミ声で気性が荒くスズメやムクドリを追い払うこともしばしば。




美しい色のメジロ、つがいで来ることが多い小型の鳥。




ツグミ、地面をピョンピョン跳びはねる姿が多い中で珍しく樹上でリンゴを啄む。




圧倒的な個体数で主に穀類に集うスズメ。




雑食性のため果物好きの個体も見かけます。





(東洋経済オンラインより)
1月中旬あたりから新型コロナウイルスオミクロン株による第6波が本格的に立ち上がって来ました。第5波のデルタ株と比較し感染力の強さと重症化率の低さで随分性質の異なる感染症に移行した印象を持ちます。英国からの報告でも入院率、死亡率ともデルタ株よりも低く重症化しにくい事は事実のようです。しかしワクチン未接種者における重症率は相応に高く普通の風邪やインフルエンザと比較しても死亡率は高いため、ただの風邪になったと安心するのは時期尚早に思えます。




長野県内でもPCR陽性者数に比較して重症者数は低く抑えられています。その理由として、

1. 若年者の感染が多かった
2. ワクチン2回接種により発症しても軽症または無症候性感染で済むケースがほとんど

の二点が挙げられます。従って今後高齢者の感染が増えた段階で重症化率がどの程度アップし医療逼迫のリスクとなるのか注視する必要があります。無症候感染者も有症状の感染者同様にウイルスを他者にうつします。従って知らずに広がってしまうステルスクラスターを回避するためにも日々の感染予防対策は今も尚重要です。欧米諸国では感染対策のガードを下げる動きがありますが、感染による自然免疫獲得が期待出来ず爆発的な感染で次の変異を助長する危険性もあり全く賛成できません。新型コロナウイルスは個人にとっても社会にとってもかかったら損な感染症です。




日本透析医学会の1月20日付けの資料です。
透析患者全体で新型コロナに罹患した人は2,800人で死亡者は427人、死亡率は15.3%となります。



一方、ワクチンを2回接種後に罹患した人は280人で死亡者は12人、死亡率は4.3%と全体の1/3以下に抑えられています。
80代以上の死亡率は全体で29.8%と高いですがワクチン2回接種後では6/67≒9.0%とやはり全体の1/3程度に抑えられています。70歳台でもワクチン2回接種者の死亡率は6.3%と全体の20.6%と比較し同様に抑えられており、60歳台以下では今のところ死亡者ゼロです。

透析患者ではワクチン2回接種で死亡率が明らかに低下しています。しかし70代以上の高齢者では全体の1/3程度まで抑制されていますが2回接種後も6〜9%の死亡率であり、透析を受けている高齢者には十分な感染予防対策が必要と言えます。インフルエンザの死亡率が約0.1%であることと比較しても「単なる風邪」では済まされないことは明らかです。
持病を持つ方特に高齢者では早めのブースター接種と感染予防(密を避ける、マスク、換気)の徹底が大切です。当院では全職員と入院等で接種出来なかった数名を除き全透析患者のブースター接種を終えています。




長野県内でもPCR陽性者が急増し当院の患者が濃厚接触者に該当するまたは濃厚接触者の二次接触者に該当するケースが多発しています。
当院は高齢の透析患者が多いため濃厚接触者、その二次接触者に該当した方は適切な時期に院内でPCRを施行しています。




(写真は陰性例)
院内PCR検査は2時間ほどで結果が出ます。家族がPCR陽性になり濃厚接触者に該当した患者のケースでは保健所に指定された日時より1日早く当院でPCRを行ったところ陽性反応を得たため、即日保健所に発生届を提出し翌日には専門病院に入院となりました。経過は良好で既に退院が予定されています。

院内でPCRまで出来る体制とともに該当者は個室での隔離透析とすることで感染対策を徹底しています。



2022年1月の治療指標の達成度です。




お年越しの影響で血清Pが上限の6mg/dlを越えるケースがいつもより目立ちました。血清Pが上昇するとPTHも上昇するケースが多くその場合はP吸着剤を一時的に増量するなどして対応します。PTHが動かずPの数値もあまり高くないケースでは食事療法のみで経過観察です。

蛋白質に含まれる有機Pの消化管からの吸収率が50-60%に対して、加工食品に含まれる添加物由来の無機Pの吸収率は99%と高く少量でも血清P値の上昇に大きく関与します。純粋な蛋白質の摂取量を確保するためにも栄養にならない無機Pの摂取はなるべく少なくする必要があります。また缶詰の中骨や丸ごと食べることの出来る小魚では骨由来のPが高値となることがあります。骨の栄養価も高く無いため添加物由来の無機Pと同様の理由で摂取は控えることが大切です。



第6波を形成するオミクロン株の出現で感染者数は圧倒的に多くなり保健所の業務もいよいよ限界に近付いています。60歳以下のワクチン2回接種者の重症化率はそれまでの株に比較してかなり低いため、それら低リスク群と高齢者や持病持ちおよびワクチン未接種者といった高リスク群で扱いを変える時期なのかもしれません。その意味で第6波は新型コロナウイルス感染症の潮目の変わり所と言えます。
しかし感染が無制御に拡大すれば高リスク群の罹患者も増えてその中から一定の割合で重症化し医療リソースを圧迫するでしょう。また低リスク群ならば感染しても良いのかと言われれば答えは否です。クラスター源は可能な限り少ないに越したことはありません、また約5%と言われる後遺症の発現も決して少なくない数字です。

重症化リスクの有る無しで対応を変えてゆく時期にきていると思いますがそれは感染しても良い事とは別です。感染予防を継続してなるべく罹患しないように心掛けることが大切です。


須坂 腎・透析クリニック


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