2023年02月26日

如月終盤、春の気配

如月終盤、春の気配
2月も終盤、時折雪がちらつき朝晩氷点下まで気温は下がりますが、日中は温かく感じる日が少しずつ増えてきました。写真は彼岸花の葉に隠れるように花を付けたスノードロップ。球根の多年草で毎年同じ場所に顔を出します。


如月終盤、春の気配
毎年最も早く開花するクリスマスローズ。気温が上昇すると根雪が無くなり早春の花芽が動きはじめます。


如月終盤、春の気配
早い年は2月下旬に開花する水仙、今年はやや遅れています。


如月終盤、春の気配
蕗の薹は2月中旬から顔を出し始めそろそろ開花です。



当院の定期検査サマリーについて昨年12月に血清アルブミン、血糖値とグリコアルブミン、そして1月に尿素窒素、クレアチニン、尿酸について解説しました。今月は各種ミネラルとカルシウム、リンとそれらを調節するホルモンについて触れたいと思います。

如月終盤、春の気配
ナトリウム(Na)は体内の水分のうち細胞の外側に存在する水分(細胞外液)で最大量を占める陽イオンです。そのため細胞外液量を規定する重要なイオンでもあります。食塩(塩化ナトリウム)を構成する陽イオンであり塩分を過剰に摂取するとナトリウム濃度が急激に上昇しないように口渇中枢が刺激され水分を欲するようになります。腎臓が正常に働いていれば余剰なナトリウムと水分は尿として体外に排泄されますが、透析患者ではこのメカニズムが障害されており余剰な水分はそのまま体内に貯留します。一回の透析で安全に除去出来る水分量には上限があるため(ドライウェイトの3〜5%)、除水可能な範囲を超えて水分を摂取すると病的な水分貯留から心不全を来す事があります。特に既に心不全を合併しているケースでは体水分量のわずかな増加で呼吸困難が出現することもあります。現在の心不全治療は体水分量を少なくコントロールすることが重要とされています。現時点で心不全が無くても過剰な水分貯留により心筋にダメージが蓄積し将来的に心不全(拡張障害)が生ずるリスクも指摘されています。無尿や十分な尿量を確保出来ない透析患者では体水分量が過剰となりやすいため、一回一回の透析で安全な除水量の範囲に体重増加をコントロールすることが、心不全のリスクを回避する意味で極めて重要といえます。検査値としてのナトリウムは透析がしっかりできていれば基準値を大きく外れることはありません。水分摂取が過剰な場合は稀釈されて低ナトリウム血症を来す場合があります。

カリウム(K)は99%腎臓から出て行きます。故に腎不全では排泄量が低下するためカリウムが蓄積されやすくなります。腎不全患者にとって高カリウム血症は回避しなくてはならない優先度の高い事象です。これはカリウム値と心臓が密接に関係しているからです。心臓は意識しなくても1分間に60〜80回「規則正しく」収縮して血液を循環させます。このリズムを形成する心臓の細胞では細胞内外のカリウムイオン濃度のバランスで興奮が制御されています。血液中のカリウム濃度が上昇するとやがてこのバランスが破綻してリズムが生成されなくなり、最悪心臓が止まってしまいます。これが高カリウム血症に注意が必要な理由であり、十分な透析が出来ている条件で透析前カリウム濃度は6.0mEq/L以下が目標です。これが8.0mEq/Lを越えると心停止に至る不整脈の発生頻度が高まります。反対にカリウムが低すぎても心臓の収縮力の低下、不整脈の発生、筋肉の脱力発作など有害事象が起こります。よって透析後カリウム濃度は3.0mEq/L未満にならないように調節します。カリウム濃度は野菜や果物など生の細胞成分の摂取により上昇するため(カリウムは細胞の中に豊富に存在します)カリウムが高い場合は摂取を控え、透析後カリウムが低い場合はむしろ摂取を励行します。

塩素(Cl)は細胞外液中に最も多い陰イオンです。電気的中性を保つため陽イオンの総量と陰イオンの総量は常に同じに保たれています。従って塩素イオンが増加した場合は別の陰イオンが相対的に低下した事を意味します。通常塩素イオンと関連して上下する陰イオンはアルカリの指標である重炭酸イオンであり、塩素イオンの上昇は重炭酸イオンの低下=血液の酸性化、塩素イオンの低下は重炭酸イオンの上昇=血液のアルカリ化を意味します。ナトリウム同様に塩素も通常極端な数値を取ることは希で、透析により概ね許容内にコントロールされています。

カルシウム、リンまでカバーする予定でしたが文章量が思いの外多くなってしまったので次回に延期します。



冬の季節のお客さま。
如月終盤、春の気配
ツグミ、スズメのような体色ですが一回り大きなサイズ。今年も庭に鳥たちが来るようになりました。



如月終盤、春の気配
ヒヨドリ、最も出現頻度が高く独特のダミ声で鳴きます。



如月終盤、春の気配
ムクドリ、都市部では大きな群れをなしフンの絨毯爆撃が発生するため嫌われています。



如月終盤、春の気配
メジロ、「ウグイス」色の小柄な鳥。



如月終盤、春の気配
雑食のスズメ、冬に限らず年中います。穀類を好みますがさすがの雑食、林檎も啄みます。



今月の治療指標の達成度です。
如月終盤、春の気配

如月終盤、春の気配

年末年始の影響も薄まり透析医会の指標、当院独自指標とも大きな変化は見られませんでした。例年、今頃の血清アルブミン値が年間で一番高くなります。



如月終盤、春の気配
クロッカスも開花間近です。


新型コロナウイルス感染症は発生例が低下傾向にあり社会的にも経済優先に舵を切る方針が続いています。その中でマスクの位置づけについての議論を目にする機会が多くなりました。マスクは万能ではありませんが無力でもありません。つける、つけないの両極端で議論するのはナンセンスです。新型コロナがパンデミックを起こす前を思い起こせば、ごく普通の感染対策としてうがい、手洗いとともに人混みでのマスクは常識でした。また、咳が出ている人は他人の迷惑にならないようにマスクを付けていました。新型コロナウイルス感染症(この名称も5類移行に伴いコロナ2019に変わるようです)は年齢や持病の有無で重症化リスクに大きな幅があります。無症状でも自身や自身の関わる人のリスクに合わせて必要な時に着用すれば良く、咳やくしゃみの症状があればエチケットとして着用すれば良いと考えます。そして逆マスク警察の様な輩が出てこないことを祈ります。

須坂 腎・透析クリニック


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Posted by Kidney at 16:14│Comments(0)ひとりごと
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