2023年01月26日

晴れの正月と大寒波


2023年(令和五年)1月、今年初のブログアップです。




昨年末のクリスマス寒波後は晴天が続き雪のない年越しとなりました。このまま降雪に悩まされない日々が続けばと思っていましたが自然は中々希望の通りに動いてくれないものです。




12月31日(土)が仕事納めで日曜日の元旦を挟んで今年の仕事始めは1月2日(月)、新型コロナウイルス感染症への向き合い方、高騰する燃料費、サポートを必要とする高齢者の更なる増加、多くの課題を抱えてのスタートです。




今月も当院の定期検査サマリーについて解説します。12月は栄養指標としての血清アルブミン、血糖値のコントロールを示すグリコアルブミンについて触れました。その下段の項目は透析効率Kt/Vや蛋白質の摂取量を表すnPCRの計算にしようする尿素窒素(BUN)、腎機能が低下すると上昇するクレアチニン(Cr)、プリン体(核酸の成分)の代謝によって生まれる尿酸(UA)が続きます。

尿素窒素は蛋白質が代謝された後の残りかすといえます。従って蛋白質の摂取量が増加すると数値も上がります。また尿素は分子量が小さく細胞内外に均等の濃度で分布するため、透析によりどれだけ除去されたかをみることで透析効率の指標にもなり得ます。尿素窒素は運動や発熱、消化管出血、ステロイド投与によっても上昇するため、蛋白摂取の指標として用いる場合にはそれらの影響が無いことが前提になります。

クレアチニンは腎機能の指標として代表的な検査項目ですが、透析開始後はその目的で使用することはほぼありません。腎機能は透析により代替されているためです。クレアチニンは筋肉で産生されて腎臓経由で尿中に排泄されます。筋肉量が多いほどクレアチニンの産生速度は大きくなるため%CGR(%クレアチニン産生速度)という形で筋肉量の評価に使用されます。これは健常な人の筋肉量の何%の筋肉量を持っているかを示し数値が高いほど生命予後が良い(長生きできる)ことが分かっています。

尿酸はプリン体の代謝産物であり人体を構成する細胞の新陳代謝で産生される内因性と食物に含まれる外因性に分かれます。内因性は細胞がまとまって崩壊するような異常事態になら無い限り概ね一定のため、通常は外因性つまり食事内容に大きく影響されます。細胞成分の多い食物である肉、特に臓物の部分、植物でも細胞分裂が盛んな芽の部分などを摂取すると代謝産物として上昇します。透析患者では透析による除去も考慮して通常よりもやや高めの10mg/dl未満をコントロール目標としています。蛋白質の摂取により尿酸とリンは両方上昇しますが、尿酸値が純粋に細胞成分由来なのに対してリンは細胞成分由来の有機リンと添加物由来の無機リンに分かれます。従って尿酸値に対してリンが極端に高い場合は蛋白質に依らない添加物経由の無機リン摂取が増加した可能性を考えます。ハム、ソーセージ、ベーコン、カマボコやちくわといった練り物の多くは製造段階でリン酸塩を含む添加物を使用するため純粋な肉や魚の摂取に比べてリンが高くなりやすい傾向にあります。有機リンの消化管から血中への吸収率が50%程度なのに比べて無機リンは90%以上と高いため、少量でもリンが上昇してしまう点にも留意が必要です。

次回は電解質について解説します。



今月の治療指標の達成度です。




年末年始の食事は加工品がどうしても多くなるなど普段と少し異なることが多いために1月の検査結果もその影響を反映することがあります。上昇し易いのがカリウムやリン、糖代謝異常のある方では血糖値やグリコアルブミンなど関連指標がそれにあたります。今季は統計データを見る限り大きな変動は無く、上昇したとしても許容の範囲に収まるケースがほとんどでした。


フロアにCOVID-19罹患者が当たり前にしかも複数名いる状況下でも透析治療は継続されます。「施設に持ち込まない」から罹患者が出ても適切に対応して「クラスター化させない」に対応も変化してきました。しかし個室透析室には限りがあり再生産率が3とも5とも言われるSARS-CoV-2に対応するには感染者数自体がコントロールされないと厳しい状況です。(季節性インフルエンザは1.1-1.3)透析患者がCOVID-19に罹患した場合の死亡率は全体で8.5%、70歳以上では10-15%と高く「ただの風邪」では済まされません。8割が高齢で全例持病持ちの方が治療を受ける透析室から見える光景は、社会一般のそれとは異なります。ただ、なるべく自分もうつらない、なるべく人にうつさない様に心掛けることが大切なのは共通していると思います。




1月24日午前中の中庭、クリスマスローズが開花していました。



水仙の花芽もわずかに色づいています。




1月25日午前、今季最大の寒波により一晩で30cm近く雪が積もりました。




昨日とは異なり一面銀世界、クリスマスローズも水仙も雪に埋もれてしまいました。




南天も再び雪を被りました。


4月で当院は10年目を迎えます。維持透析患者さんは40数名から110名に増えて、高齢化も確実に進んでいます。個々の生活状況やADLも非常に幅が広くなっています。高効率の透析から緩やかな条件の透析までその方に合った治療を組み立て、毎月の定期検査の結果を治療条件にフィードバックさせて、常に最適化された透析を個々に提供したいと考えています。

須坂 腎・透析クリニック
  


Posted by Kidney at 16:09Comments(0)ひとりごと
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