2014年03月31日
春の気配、開院一年です。
天からの白い落下物を見る度に陰性感情が湧き上がる程、今季の降雪は規格外でした。それでも、その記憶も、ここ数日の陽気で確実に薄れていきそうです。写真はクリニック待合の早咲の桜の枝、桜の名前は・・・忘却の彼方。
本日で開院一年目。
丁度1年前に届いた胡蝶蘭が今年も花を付けました。
少し前まで名残惜しそうに積もった雪も消えて、
クリニック中庭にも春の花が咲き始めました。
2013年透析患者さん37名でスタートした須坂 腎・透析クリニック、おかげさまで現在では60名を越える方々が通院されています。ここで一年の総括として統計的な数値のご紹介を少し。透析患者さん粗死亡率は年間10%弱とされていますが、この一年当クリニックでは病気のため通院困難となり離脱された方が1名のみでした。それ以外の方は全員元気に明日から二年目に突入です。この一年における紹介状の発行枚数は約150件、近隣の病院・診療所を始め信州大学病院、希望があれば県外の病院も含めて病状に応じて最適な病診連携を行っております。特にCTやMRIの画像検索については、放射線科医による検査結果の読影が極めて重要です。当院では正確な読影をしていただける施設に紹介して撮影を行い、経過観察が必用な場合は密に連携を取るように心掛けています。シャント管理に有用なシャント造影は44件、これとは別にインターベンションによるシャント血管の治療(PTA)は38件でした。シャント造影は脱血不良や静脈圧の上昇、狭窄音の聴取が認められれば即時行います。またPTAの既往がある方は定期的に造影を行い、自他覚症状が無くても血管径が一定以下に狭小化している場合は閉塞のリスクが高いと判断しPTAの適応を検討します。
一年目に取り組んだ高血流化による透析効率の上昇。教科書的には血流量が250ml/minを越えると透析効率の上昇は頭打ちになるとされていましたが、必ずしもそうならないことが明らかとなりました。2013年12月以降新規の透析患者さん、特に導入間もない透析患者さんが増えたため血流量、透析効率共にやや停滞の傾向ですが、250ml/min以上でも血流量とと透析効率は相関して上昇しています。
spKt/Vは主に小分子の除去効率を示します。小分子除去の物理的原理は血液濾過透析(HDF)でも通常の透析(HD)でも同じです。細菌由来の毒素であるエンドトキシンを含まない清浄な水(ultra pure water)の使用で血圧が安定し、高血流の維持が可能となったわけです。血圧の安定化には当院で採用している酢酸を使用しない透析液の関与も考えられます。さらに透析液の直接供給により大量の血液濾過を組み合わせたオンラインHDFで、通常の透析では除去しにくい中分子以上の尿毒素を除去します。オンラインHDFは優れた治療法ですが透析条件の設定や透析液の管理がしっかり出来ていないとその真価は発揮されません。当院では毎月の定期検査の結果を綿密に分析し処方や透析条件に反映させています。またどんなに効率的な透析を行っても食事制限が全く無くなることはありません。透析効率の上昇で蛋白制限はかなり緩和可能となりましたが、透析間の体重増加=一回の透析による除水量には限界があり、水分摂取量の調節は必要です。口渇感は大変強い欲求のため、ひとたび生ずるとこれを我慢することはかなり困難です。従って口渇感を抑えることが水分制限の近道となり、具体的には塩分の制限、血糖の高い方では血糖値のコントロールとなります。塩分過多や高血糖は口渇感を引き起こす引き金になるためです。当院では十分な透析により十分に栄養を摂っていただくことを推奨しており、管理栄養士による栄養指導も随時行っています。多くの患者さんには月一度の栄養相談を毎月継続的に受けていただき、食生活への疑問点やバランスの良い透析食について理解を深めるお手伝いをしています。
患者さんから頂いたチューリップ。
昨年、高血流を維持するために最適な穿刺針を選ぶため、実際に脱血可能な血流と穿刺針の太さを検討してきました。その結果を「高血流量透析における穿刺針の検討」のタイトルで当院看護師が6月に神戸で行われる日本透析医学会学術集会で発表します。今後も全国レベルの学会で情報発信出来るように、より良い透析を目指して日々研鑽に勤めたいと考えます。
エントランス、これも患者さんが持って来てくれたガーベラ。
入口横の沈丁花の蕾も少し大きくなってきました。
スタッフルームの一コマ
須坂 腎・透析クリニック
明日から二年目!
Posted by Kidney at 14:15│Comments(0)
│ひとりごと