2016年12月29日
師走に綴る2016年の総括
2016年も本日を入れて残り3日となりました。昨年の今頃は新棟増設の設計打合せが始まり5月の連休明けに着工、そして半年経過した11月に完成引き渡しがあり今月から本格的に運用を開始しました。新たな患者さんが増える一方で、休日や年末年始のベッドコントロールも楽になり、また早速5時間透析に挑戦する方も出てきました。
新棟につながる廊下の壁にもクリスマスディスプレイ。今年は美術担当スタッフの気合いの入れ具合が例年の150%増しでした(笑)
今年も高さ2mのクリスマスツリーを飾り
患者さんとスタッフでクリスマスリースを手作りしました。
二階の内窓から美術監督K女史お手製タペストリーを吊るしています。
増築工事最後の工程の終了
非常用発電機の横には490L収納の軽油タンクが設置されこの日給油を行いました。発電機付属のタンクでは数時間しかバックアップが出来ませんが大容量タンクの設置により9-10時間の連続運転が可能となり、丸1日の停電でも通常に近い治療の継続が可能となりました。年明けには市内の給油所(高見澤、須坂墨坂SS)と軽油の災害時優先供給協定が締結される予定です。
今月の治療目標の達成度です。
貧血の指標ヘモグロビン(Hb)、血清リン(P)、透析量(Kt/V)いずれも90%台後半の達成度を維持しています。やや大きなサイズの除去対象であるβ2MGは冬期にやや上昇する傾向がありますが、除去率は80%以上を保ち透析後の数値は5mg/L未満を維持しています。後で示すようにHDF膜の選択を工夫しβ2MGの除去率は年間を通じて上昇しました。栄養関連では血清Alb値を落とさず低い血清Pを達成していますが、各種栄養指標はまだ改善の余地がありそうです。造血関係ではエリスロポイエチン製剤(ESA)の使用量が増加しました。新規導入および特に若い方で積極的にHbを高めに維持している影響が考えられます。
今月は更に血清Mgの推移もレビューしてみました。
透析前のMg値は2.3±0.3mg/dl、前回総括した2015年11月の2.28±0.3mg/dlより若干上昇していますが(有意差なし)、2016年3月、7月と低迷しておりやっと上向いてきた印象です。
度数分布でも2.0≦Mg<2.5が41名(54.7%)と最も多く、全死亡リスクが最も低いとされる2.7-3.0mg/dlが含まれる2.5≦Mg<3.0には23名(30.6%)でした。2.5mg/dl以上の人は昨年末で29%に対し今年は32%とやや増えました。有意検定はしていませんが Mgの高い人はnPCRや血清Albも高い印象であり「よく食べている栄養状態の良い人」である可能性があります。なるべく食事療法でMg値の適正化に努めたいと考えます。
さて2016年の臨床統計の総括です。
貧血管理においては年間を通して平均Hb>11.0g/dlを維持、10.0g/dl以上の達成度も常に90%台後半でした。8月以降新規導入例が多くESA使用量が増えました。運動量の多い元気な方ではHb 11.0以上の維持を積極的に目指していることも影響していると思われます。
鉄管理では3月以降鉄剤の静注を原則週1回としてferritin値が低下傾向です。100ng/ml以下で鉄補充を検討し、逆に過剰とならないように毎月の採血の結果を参考にして投与回数をきめ細かく変更しました。その結果血液透析の患者さんは常時70〜75名で、ferritinが300を越える方は毎月1-2名のみでした。(1名は転院前から数年にわたり高値を示し、もう1名は感染後の一過性の上昇。)Tsatも概ね20%以上を維持しています。
栄養管理では平均年齢が75歳を上回る母集団でAlb値が通年で全国平均を越えており、各種栄養指標も悪くない数値です。高効率の透析により溶質除去を可能な範囲でアップした結果蛋白制限を緩めることが可能となり、栄養状態の維持にプラスに影響したと考えられます。今後は一層高まる高齢化により食事摂取量の維持が困難となるケースも多くなると思われます。栄養補助食品の使用など積極的な対策も必要ですが、栄養状態を低下させないように透析効率をダウンサイズする消極的対応を検討する事例も多くなるかもしれません。一方高齢であっても元気な方には積極的な透析、食事摂取、運動を引き続き推奨したいと思います。
透析効率では血流量は全国平均228ml/minよりも100ml/min以上高い348±7.3ml/min、平均spKt/Vは通年で平均2.0を越えました。Alb, nPCRが比較的高い中でPは全国平均の8割強に抑えられており、高効率透析の効果がここでも顕現していると考えられます。Albが低い母集団でPが低い場合は栄養不良の関与が想定されます。一方でAlbが高い母集団でのPの低さは透析効率や無機リンからのP摂取を抑えた上手な栄養の取り方が実践出来ている証左でもあり、今後も継続的に維持出来るように力を入れたい部分です。
透析前のβ2MG値は季節変動がありますが、膜の選択を工夫し透析後は5mg/Lを恒常的に下回り、除去率は徐々にアップして80%を越えました。透析後の低いβ2MG(<5mg/L)は透析アミロイドーシスの発症抑制とも相関しており、是非維持したい項目の一つです。またβ2MGが低いことはそれだけ治療に使用している水が清浄なことも意味しており、今後も透析水質管理委員会を中心に厳格な清浄化を進めます。
臨床統計は施設の現状を客観的に示しており、これを解析することで目指す方向とその手段が明確となってきます。当院の目標は可能な限り質の高い透析治療を全ての患者さんのに提供し、元気に通える透析を1日でも長く続けて頂くことです。そしてもう一つ、元気に通うことが困難になっても多(他)職種や地域との連携によりセーフティーネットを形成して支え見守る、その中心としてクリニックが機能すること。これは今年の県透析医学会で発表した「要介護高齢透析患者の地域連携について」にその一端をまとめました。当院も来年5年目を迎えますが、現状に満足することななく最良の透析医療を更に目指して進化したいと思います。
硬い・・・ハナシが続きましたが、
クリスマスが終わると
サンシュユの実
少し気温が上がって雨が降り
次に雪が降りました。
そうこうしている内にお年越しの準備!
来年もよろしくお願い申し上げます。
須坂 腎・透析クリニック
Posted by Kidney at 20:15│Comments(0)
│ひとりごと