2017年08月29日
盆過ぎて落日早む葉月暮れ
凌霄花を匍わせたポールの上で夕陽を浴びるヤマバト。夏至から2ヶ月が経過し日没の時刻が次第に早まってきました。夕刻の外気温も少し下がりすごしやすくなった感じもありますが、日中は依然として30度を超えて残暑真っ只中です。
8月の旧称葉月の言われは幾つもあるようですが、木の葉が紅葉して落ちる月「葉落ち月」が転じたという説もその一つです。中庭の木々の一部に葉の色が変わってきたものもありますが、紅葉と言うよりも暑さに葉が焼けてしまった様です。
夏の花の代表は百日紅、この時期は彼方此方でこの花を見かけます。台風の風にも負けずもうしばらく花を楽しめそうです。
台風と言えば先月中旬に発生した5号は長く太平洋を迷走しながら発達し非常に強い台風となりました。お盆明けに発生した13号は太平洋を西に進み中国に上陸し、暴風雨により大きな人的被害をもたらしました。日本は直接の影響は受けませんでしたが愛知県では巨大な積乱雲(スーパーセル)が発生し、7000発を越える落雷が観測され火災被害もありました。異常気象というよりも気候変動と形容した方が良いのかもしれません。
話しは変わり、気圧の差で空気の流れ=風が発生する様に、生体内では細胞の内外に存在する体液の濃度差により水の流れが生じます。高校物理に出てくる「浸透圧」で半透膜に相当するのが細胞膜です。(細胞膜に接して二つの分画に体液が存在すると、溶媒である水は溶質の薄い方から濃い方に移動します。)暑い日が続きまだまだ積極的な水分補給が必要ですが、人は一日に何リットルまで水分を取ることが出来るのでしょうか?ヒトが一日に排泄出来る水の限界量≒摂取限界量と考えると、腎機能が正常な場合12〜20リットルまで許容内とされます。理論的には溶質摂取量が多ければ40ℓ程度まで可能とも言われます。特殊な状況でない限り一日何十リットルも水分を摂るヒトはいません。しかしホルモンの異常などで純粋な「水」の排泄が滞るとより少ない水分摂取で体液が薄まってしまい不都合が生じることもあります。細胞外に存在する体液で最も存在量が多いイオンはナトリウム(Na)のため、体液が薄まった状態では低Na血症が生じます。細胞を取り囲む体液が薄まると浸透圧の変化から水は細胞内に移動し細胞はパンパンに腫れてしまいます。頭蓋内のように限られた空間の中で細胞の体積が増加すると圧力が上昇し、最悪生命の危機に直結する結果(水中毒)となります。これは低Na血症で脳浮腫や腫れた脳が行き場を失い脳ヘルニアを発生するメカニズムです。逆に水分摂取不良または極度に過剰な塩分摂取に、腎臓からの「水」排泄亢進が加わると細胞を取り巻く体液のNa濃度が高くなります。このような高Na血症では細胞内から細胞外に水の移動が起こり細胞はの体積は減少します。体積減少が高度な場合周囲の血管が牽引されて破れ頭蓋内出血を起こすこともあります。腎機能の発達が未熟な乳幼児ではより少ない塩分負荷でもこのような破綻が生じ「塩分中毒」を来します。いずれも極端な例で日常生活の中ではめったに遭遇しませんが、体内で水や電解質が極めて精密かつ複雑に調節されていることを実感する現象です。塩化ナトリウムも水もそれ自体に細胞毒性はありませんが、生体内の調節域を越えて存在すると生命を脅かす「毒」となり得るのです。
今月の治療指標の達成度です。
2017年8月の治療指標の達成度です。新規導入の患者さんと、栄養状態の低下から血流量を下方修正した患者さんが多く、平均血流量は今年最も低い数値です。これにより透析量(Kt/V)の平均は横這いですが、1.8以上の患者さんが低下しました。透析効率を高める目的の一つに、老廃物の除去量を多くすることでより食事制限を少なくして栄養状態の維持・回復を目指す事が挙げられます。従って経口摂取が低下している状態で透析効率ばかり上げても意味は無く、むしろアミノ酸の出納バランスが負となり、かえって栄養状態を低下させてしまうリスクが高まります。蛋白質の摂取量を示すnPCRが横這いなのにアルブミン値がやや上昇している点も透析量を減らした効果かもしれません。透析条件は一人一人の状態に合わせて最適化することが大切です。貧血の指標ヘモグロビンに低下はありませんがESAの使用量が高値維持です。ESA抵抗性の上昇を示唆しますがその原因は判然としません。CRPや先月のβ2MGに目立った上昇はなく、蛋白摂取の低下が関与している可能性も考えられます。残暑が落ち着き過ごしやすい季節の到来が待ち遠しいデータです。
寛ぐヤマバトと周囲のスズメ。過日、某番組(タ○リ倶楽部)でスズメの写真撮影を特集していました。スズメはヤマバトの比較にならないほど敏感で余程気をつけないと飛び去ってしまいます。むしろヤマバトが鈍感なのでしょうか?
アジサイの遅れ咲。
百日紅をもう一枚。
来月のブログをアップする頃にはかなり過ごし易くなっているでしょうか?
須坂 腎・透析クリニック
Posted by Kidney at 17:42│Comments(0)
│ひとりごと