2017年09月27日

長月に咲く曼珠沙華

長月に咲く曼珠沙華


7月8月の猛暑が嘘の様に今月に入り急に過ごしやすくなりました。酷い残暑を覚悟していただけに肩すかしな感もあります。ここ数年は以前ほど紅葉が美しくないと感じていました。色付く期間も短く中には色を変えぬまま枯葉になってしまうことも。紅葉が美しく映えるには昼と夜の気温差が影響するとされますが、今年の気候は吉と出ますか凶となりますか?





長月に咲く曼珠沙華
彼岸が過ぎて彼方此方で見かける曼珠沙華(リコリス)。クリニックの中庭で最も早く開花するのはこの黄花です。黄色のリコリスはショウキラン、ショウキズイセンとも呼ばれます。ラン科の植物にも鍾馗蘭(ショウキラン)と呼ばれる株がありますが、リコリスとは当然別物です。




長月に咲く曼珠沙華
最もポピュラーな赤花。「彼岸花」と言うとこの赤花のリコリスを思い浮かべます。「彼岸」の響きから縁起の悪い植物と連想されてしまうこともあるようですが、季節を告げる艶やかな花であり「曼珠沙華」の名称が最も似合うと感じています。「名前」で印象が随分変わるものです。




先月のブログで「水」も「塩(塩化ナトリウム)」も許容限度を超えて取り過ぎると「中毒」となる話を書きました。水と塩は密接に関係するため、我々は水・電解質代謝として一括に扱っています。例えば点滴、電解質(ミネラル)や糖分が溶けた水を直接血管の中に補充する治療です。しかし純粋に血管の中の水分だけが増えるわけではありません。血管はゴムホースと違い隙間だらけで、水は比較的自由に血管の中と外を行き来します。体内での水の分布を細胞の中と外に分けると、細胞外に分布する水分量を決める因子が塩分(ナトリウム濃度)です。従って点滴に含まれる塩分濃度により、補充された水の分布も変化します。一般的な点滴の中で最も塩分濃度の高いものが生理食塩水です。生理食塩水とは細胞外液の塩分濃度に近い組成であり、100%細胞の外に分布します。(つまり点滴で供給された水の塩分濃度が細胞外液の塩分濃度と同じなため、細胞外液中のナトリウム濃度は不変であり、結果水分の細胞内液への移動が起こらない。)細胞の外に分布する水分のうち1/3〜1/4が血管内に分布するので、1000mlの生理食塩水を点滴すると、純粋に血管内で増加する水分は約250mlになります。逆に最も塩分濃度の低い、つまり塩分ゼロの点滴がブドウ糖液です。塩分が含まれないと水分は細胞内外に等しく分布し、その比率は細胞内に2/3、細胞外に1/3です。(細胞外の水分のうち血管内に分布するのは1/3〜1/4ですから)よって投与量の10%ほどしか血管内に分布しません(1/3×1/3=1/9≒1/10)。1000mlのブドウ糖液を点滴すると純粋に血管内に分布するのは100ml弱となり、当然生理食塩水の1/3程度です。点滴が何種類もあるのは「体内のどの部分に水を届けたいか」によって塩分濃度を変える必要があるからです。例えば大量出血で血管内の水分が血液として大量に失われている場合、輸血の準備が整うまで使用する点滴は?答えは最も細胞外液(血管内)に分布する「生理食塩水」になります。心不全や腎不全に場合、塩分負荷(細胞外液量の増加)は悪化につながることがあります。その際は塩分濃度がやや低い点滴を使用します。一方で頭蓋内の細胞が腫れる脳浮腫など、細胞内の水分をあまり増やしたくない時に塩分濃度の低い点滴は好ましくありません。細胞の中に入る水が相対的に多くなり細胞の浮腫が悪化します。一般的な頭部外傷の救急で点滴にブドウ糖液などを使用したら、間違いなく脳外科の先生に怒られてしまいます。脳浮腫では塩分の変わりに別の物質で浸透圧をアップした点滴を用いて、細胞内から細胞外への水の移動を促す治療を行うこともあります。



長月に咲く曼珠沙華
今月も中庭に毎日の様にキジバトが訪れました。




今月の治療指標の達成度です。
長月に咲く曼珠沙華




長月に咲く曼珠沙華




2017年9月の治療指標の達成度です。暑さが一段落していよいよ「食欲の秋」が到来です。回診では「最近、食べられるようになった」との声が聞かれるようになり、ドライウェイトの下方修正も頻度が少なくなりました。一方でデータとしての回復基調はまだ見えていません。先月から本格的に栄養状態に基づく透析量の調節を開始しており、平均血流量は今月も低下、来月は更に低下すると思います。比較的若年でβ2MGも高い方はこれまで通りの高血流、高効率を維持、主に高齢で経口摂取量の低下した方は老廃物の除去状態を見極めながら、血流量の引き下げや膜面積の見直しをして継続的に透析効率の最適化を進めています。透析時間延長の影響で平均透析量(Kt/V)は若干増えていますが、Kt/V>1.8の患者さんは更に低下しており、高齢で栄養状態の低下した方に対する調節の結果と考えています。これら透析条件の修正が今後の栄養指標の改善に結びつくか慎重に見極めたいと思います。
今月も貧血の指標ヘモグロビンに低下はありません。鉄剤の補充が徐々に進み、トランスフェリン飽和率(Tsat)やフェリチン値が適切な範囲で上昇しました。β2MGの除去率が若干低下し透析後の数値もやや上昇しました。これも血流量低下の影響ですが、栄養状態とのバランスを考えながら個々の患者さんの透析条件をきめ細かく設定したいと考えます。
透析前β2MG値は独立した予後指標であり、言い換えれば「低いほど長生き出来る可能性が高くなる」わけです。しかし栄養状態を顧みず特定の数値だけ下げるのは本末転倒であり、あくまでも自施設における予後改善(簡易的な指標として粗死亡率の低下)を目的とした透析条件の調節が大切なのです。当院の透析患者さんの粗死亡率は全国平均9.6%(2014年)に対し、開院以来平均2%台を維持、ここ2年は2%前半となっています。ちなみに透析患者さんの平均年齢は全国平均よりも10歳先を行っています。





長月に咲く曼珠沙華
看護助手の吉澤さんが伸びすぎた観葉植物の先端(成長点)を鉢植えにして飾ってくれました。斑入りのカポックとパキラ、量産出来そうです(笑




長月に咲く曼珠沙華
診察室前のゲンペイボク、残った萼の色付きが濃くなって来ました。




最近、医療機関で○○センターを名乗るケースが多く名称が紛らわしくなってきました。一例を挙げれば「信州上田医療センター」「南長野医療センター」に対して最近改名した「信州医療センター」。当院は「須坂 腎・透析クリニック」ですから名称のみで「何処」にあり「何を」する医療機関なのか一目瞭然です。利用を希望する人にとって「分かりやすい名前」を意識しました。逆に何処にあるかも何をしたいのかも良く分からない名称は、本当に利用者目線に立っているのか疑問に思います。





長月に咲く曼珠沙華
夏の名残の百日紅の花、名前の通り息の長い開花です。




長月に咲く曼珠沙華
一方で紅葉も始まりました。




長月に咲く曼珠沙華
コムラサキの実、この時期ならではの色付きのグラデーション。




長月に咲く曼珠沙華
最後は金木犀の花、無数の泡のような蕾が現れて数日で開花。良い香りが漂いますが開花時期はそう長くありません。



寒さ暑さも彼岸まで、その彼岸を過ぎて気温は更に低下します。季節の変わり目は不整脈やめまい発作の出現頻度も若干高く、また感染症も生じやすいものです。体調管理や手洗い・うがい・人混みでのマスクなど感染予防が大切です!



須坂 腎・透析クリニック



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Posted by Kidney at 17:39│Comments(0)ひとりごと
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