2018年11月23日

霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン

霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン
11月初旬の白樺、黄色く色付いた葉に日が当たると正に小春日和を感じる風景。その葉も今はほとんど落ちてしまい、今年もヤマモミジの紅い葉との対比は見られませんでした。





霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン
そのヤマモミジ、未だ80%程度緑色で一部は枯葉色に変わっており、紅葉を楽しむ間もなく散ってしまいそうです。一部色付いた葉に夕陽が当たっていたのでそれらしく前後をぼかして切り撮ってみました。




霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン
庭に彩りの少なくなる季節、去年より樹勢が回復したサザンカの花は貴重な存在です。




今年は健診で検尿異常やクレアチニン上昇を指摘されて受診される方が随分増えました。腎臓病の背景に生活習慣病が隠れていることも多く、二次精査では血圧や糖・脂質代謝も同時に評価してゆきます。すると40代以上では結構な頻度で糖尿病の予備群、つまり1ヶ月の血糖値の平均に相当するHbA1cが正常越えかつ糖尿病未満の結果が出てきます。それらのうち糖尿病に近い数値や、複数のリスクファクターを抱えるケースでは糖負荷試験(75gOGTT)を行い血糖値とインスリンの動態を調べます。すると食前血糖が正常、糖負荷後二時間値も正常なのに30分後の血糖値が200mg/dl近くまで上昇しているケースがありました。最近耳にすることがあるグルコーススパイクです。食後血糖値が急上昇する現象で心血管系に対し悪影響があるとされています。

食後の急激な血糖値上昇に対しては白米やパンなど精製穀物(白い炭水化物)を控える、野菜→蛋白質→炭水化物の順に食べる(サキベジ)などが有効であるとされ、外来でも糖尿病予備群の方には極端な栄養制限はせずに、適度な運動と食生活習慣の一寸した改善を勧めています。最近はやりのサキベジですが、何故か流行る前から自分でも実践しており、ほぼ毎晩キャベツの千切りにシソの葉を千切って混ぜ、いり胡麻とちりめんじゃこをトッピングしてポン酢で頂いています。しかし次第に飽きてくるため時々ドレッシングをその場で作って使ったりもします。酢と塩とコショウをよく混ぜて酢の2.5倍ほどの油を加えて撹拌させ、最後にバジル、オレガノ、セージなどのドライスパイスを加えます。最初の頃はエキストラヴァージンのオリーブオイルを使っていましたが最近は必須脂肪酸の多いエゴマ油か亜麻仁油を使うことが多くなりました。

その油が少なくなってきたので昨日スーパーに寄ったところ何故かエゴマ油が売り切れ、もう一軒のスーパーでも見事に完売。亜麻仁油が残っていたのでそれを買い求めました。さては何処かの番組で食用油の特集でも打ったのかと思い新聞のテレビ欄を見返すと一昨日にありました。ということで霜月の終わりに消えたエゴマ油、早くブームがさることを祈るばかりです。ちなみにエゴマ油も亜麻仁油もω3脂肪酸が豊富とされます。このω3脂肪酸にはEPAやDHAも含まれ体に良いと健康系雑誌で良く喧伝されています。ただし比較的生魚を多く食べる日本人においては摂取基準は概ね満たされており、毎日頑張って摂る必要は無いとも言われています。特に男性では摂り過ぎは前立腺癌のリスクファクターとの報告もあり、過ぎたるは及ばざるが如しなのかもしれません。




霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン
キキョウの葉の紅葉、鮮やかな黄色です。




霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン
クリニック中庭における紅葉の色分布は、黄:紅=9:1であまりバランスがよろしくありません(笑





今月の治療指標の達成度です。
霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン



霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン


透析医会の項目ではPTHの達成度低下と平均値の上昇が見られました。PTHに関しては分布幅も広がっておりiPTH>500以上のケースで更なる上昇が見られました。レグパラ100mg服用かつ血清リン値<6.0mg/dlにコントロールしていながらの上昇をみた2例においてレグパラから静注製剤のパーサビブへの変更を実施しました。また褥瘡治療に有効とされるアルギニン配合のサプリメント「アルジネード」を使用したところ著明な高リン血症を来たし、高リンに続発してPTHが著増したケースもありました。「アルジネード」は1パックあたり630mgのリンを含有しており、高効率の透析を行っていても高リン血症を来すリスクが高いと思われます。アルジネードによる高リン血症は過去に日本透析医学会(第56回 2011年)でも報告されており、1日3回(1890mg/day)の投与でP>15mg/dlの著明な高リン血症を来したとされます。透析患者におけるアルジネードの使用は慎重投与~原則禁忌が妥当と考えます。

当院独自指標では血清アルブミンの平均値が3.6g/dl以上に上昇しました。nPCRやDWも増えており食事摂取量の増加も一因と考えられますが、先月から導入したアルブミン漏出量の低いマイルドな血液浄化器の効果もある様です。

霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン
血清アルブミン<3.5g/dlで2.1㎡または2.5㎡の血液浄化器を使用しているケースで、アルブミン漏出量がカタログ値3.0g/4hの従来製品から1.0g/4h以下の製品に切り替えました。その結果切り替えた群において、切替前3.18g/dlだった血清アルブミンが3.32g/dlまで有意差(P<0.05)をもって上昇しました。また今回採用した血液浄化器は血清タンパク質による目詰まり(ファウリング現象)が来しにくい反面、TMPをコントロールしないとsession後半までアルブミン漏出量も多くなる可能性があります。予めQb増加と膜面積増加で十分TMPを下げておいたこともAlbの上昇に寄与していると思われます。

霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン
一方でβ2MGの除去率は79.4%から75.2%に低下しており有意差も検出されました。しかし特に高齢者において栄養状態の維持は優先すべき項目でありβ2MG除去率を犠牲にしても栄養状態の改善が優先されるとものと考えています。

霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン
今後血清アルブミンの改善が維持されるのか、β2MGや更に大きなサイズの尿毒素除去率の低下が健康状態に悪影響を来さないか注意深く経過を追いたいと考えています。



霜月に消えたエゴマ油、マイルドな膜とアルブミン
勤労感謝の日の本日。地元のジムは祝日短縮営業で物理的に行けず、そして外来も無くたっぷりブログアップする時間がありました(笑。


いよいよ寒さが本格化してきました。
インフルエンザ予防接種がまだの方はお早めに。基本的な予防行為(手洗い・うがい・人混みでのマスク)の効果は限定的との報告もありますが、衛生的な見地からは行うべき行為です。また十分な栄養と睡眠も必要不可欠です。



須坂 腎・透析クリニック


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Posted by Kidney at 20:13│Comments(0)ひとりごと
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