2020年10月25日

金木犀の咲く頃

金木犀の咲く頃
今年も金木犀が咲きました。僅か1週間程の出来事でしたが季節の移り変わりを感じる10月の風物詩です。昨年は10月12日に過去最大級の勢力で本州に上陸した台風19号の影響から長野市などで千曲川の堤防が決壊し周辺住民が大きな被害を受けました。当院でも患者数名が避難を余儀なくされましたが翌日の安否確認で全員の無事が分かりホッとしました。また千曲川沿いの最終処分場の水没から下水道の使用制限が発令されたことから、急遽透析モードを変更して使用水量の少ない治療を行いました。モード変更による治療成績への影響はみられなかったことから緊急時に節水が必要となった際に有効な方法として今年の県透析研究会に概要を発表する予定です。



金木犀の咲く頃
イチイの実もこの時期ならではの一コマです。



Gotoトラベル事業から除外されていた東京が加わり県境をまたぐ人の移動は更に多くなってきました。人の移動に伴う新型コロナウイルスの拡散が懸念されましたが爆発的な増大は無く、幸い重症者や死亡者数の増加も春先の流行と比較し抑えられています。

金木犀の咲く頃
東洋経済onlineより
全国のPCR陽性者数は500名前後で推移しており第2波と呼ばれた8月よりもやや少なめです。


金木犀の咲く頃
重症者数の推移はほぼフラットであり重症者受け入れのキャパシティの少ない一部地域を除いて集中治療室が満床となる危機的状況は今のところ発生していません。



金木犀の咲く頃
同様に死亡者数も増加傾向はみられません。

人の移動機会が増えたことなどによる感染者の増加要因と、春先の流行以来得られたデータの蓄積による治療法の進歩や予防手段の洗練化といった減少要因が拮抗し欧米諸国や南米と比較してかなり低いレベルで動的平衡状態が維持出来ていると思われます。一方で世界的な動向を見ると、

金木犀の咲く頃
FINANCIAL TIMESより
https://ig.ft.com/coronavirus-chart/?areas=eur&areas=usa&areas=bra&areas=gbr&areasRegional=usny&areasRegional=usca&areasRegional=usfl&areasRegional=ustx&byDate=0&cumulative=0&logScale=1&perMillion=0&values=deaths
欧米諸国では感染者数が再び増加傾向を示しています。



金木犀の咲く頃
死亡者数もイタリア、イギリス、フランスで増加傾向にあり、今後の動向に注意が必要です。


わが国における感染者数や死亡者数は欧米に比較して低く抑えられていますが、依然としてその理由は明らかとなっていません。非常に微妙な動的平衡の上に成り立っているとすれば、海外渡航者の増加、長期化による感染予防意識の低下、年末年始の人の移動と濃厚接触機会の増加など再び感染者増および死亡者増に平衡点が動くリスクも十分に有り得ます。

飛沫感染の生じやすい三密(密閉、密集、密接)は英語圏では3C(Closed spaces, Crowded places, and close-contact setting)と表現されますがこれに加えてDuration(滞在時間)とVocalization(発声)にも注意が必要とされています。感染リスクの高い空間での滞在時間は感染リスクと相関し、特に発声(大声での会話や歌唱)を伴うとよりリスクが高まる傾向です。後者は演劇やカラオケでのクラスター発生の例からも理解出来ます。滞在時間では最近米国CDCが濃厚接触の定義を変えました。新たな定義では24時間以内に「合計」で15分以上、感染者のおよそ1.8m以内にいた場合とされ従来の「連続」して15分以上よりも厳しくなっています。定義変更の理由は感染者と短時間の接触を繰り返した人の感染が確認されたためとしています。
https://www.cnn.co.jp/usa/35161326.html

今後も経済と感染予防の両立の観点から人の往来は国内外で増えて行かざるを得ないと思います。Gotoトラベル以降感染者が増えた地域もありますが幸い全国的には重症化例および死亡例は増えていない現状から、移動そのものをリスクと捉えるのでは無くどのような行動がリスクを上げ、逆にどのような行動がリスクを下げるのかを常に自覚しながら行動することが大切に思います。また発症・重症化のリスクは年齢や持病によって一人一人異なるため許容される行動も個々で異なることも強調したいと考えます。横並びの同調圧力は感染拡大に一定の抑制をかけたかもしれませんが、行き過ぎた振る舞いは柔軟な行動変容の妨げになります。逆に感染予防に敏感にならざるを得ない人達をコロナ脳、情報弱者などと呼びステレオタイプ化することも感心しません。


COVID-19 診療の手引き第3版では
ICUの入室率や人工呼吸器の導入率をみると、60歳代上で急激に増えています。また50歳代までは重症化は少なく60歳代から年齢が高くなるに従って致死率も高くなる傾向にあります。
金木犀の咲く頃


重症化のリスク因子
金木犀の咲く頃

若くて持病の無い方は積極的に社会活動に参加しても良いと思います。一方で高齢者や持病のある方、それらの方々と関わる医療・介護現場の職員は今後も厳重な感染予防を継続する必要があります。

当院では透析患者の重症化リスクが高いこと、高齢者が多いこと、同一空間で多数の方が同時に治療を受ける必要があることから県境をまたぐ移動はなるべく避けて欲しい旨協力を要請しています。ただし仕事など移動せざるを得ない場合は個別に移動の手段や移動先での行動まで情報共有し柔軟に対応したいと考えています。


10月の治療指標の達成度です。
金木犀の咲く頃


金木犀の咲く頃
今月は貧血の指標ヘモグロビン(Hb)が10台に低下しました。観血的(出血を伴う)処置後、重症感染後の方に加え造血機能が低下し輸血が必要となった方が重なった結果でありそれぞれ対応済みです。透析医会の指標ではその他に大きな動きはありません。
栄養関係では涼しくなり食欲も上がってきたためかいくつかの指標で上昇がみられました。総じて蛋白摂取が上昇している印象ですが血清Pは低下しました。加工品・炭化物由来の無機リンを回避しながら純粋な蛋白質である肉や魚の摂取は増えていると思われます。寒くなると鍋物・煮込み料理が増えます。鍋物やおでんの具である練り物は無機リンを含む食品添加物を使用した加工品です。食べていけないことはありませんが、量を少なくする、溶け出たリンを摂らないように汁はなるべく飲まないようにするなどの工夫が必要です。
先月のiPTHの異常低値については今月3種類の採血管にて再測定を行い結果待ちです。全血血清を用いる採血管が先月とその2ヶ月前で異なっていたためそれぞれで経時的な酵素活性の低下に違いが出るのか、更に血漿で測定した数値を加えて比較を試みています。
クリアスペースについて透析機器制御用のPCで簡易演算可能とのことで毎月の評価項目に加えました。今月は平均80%弱、最も高い方は90%後半となりほぼ想定通りの結果でした。


金木犀の咲く頃
金木犀の花は葉に隠れるように付くので下から見上げた方が映えます。


金木犀の咲く頃
コムラサキの実、ほぼ全体で色づきました。


昨年10月の浸水被害で北陸新幹線が水没しその後の出張にしばらく影響を与えました。そのダイヤが回復して間もなく新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、出張そのものがストップしてしまい半年以上が経過しています。何が起こるか分からない状況が継続していますが目の前の透析治療は変わること無く粛々と進めています。
これからは気温の低下に伴い種々のウイルス感染が生じやすくなる季節です。発熱した場合に単なる風邪なのかインフルエンザなのか新型コロナウイルス感染症なのか、例年以上に鑑別に留意が必要となります。2種類の呼吸器系ウイルスに同時にかかることは希とされています。十分な感染予防(外出時のマスク着用、石けんによる十分な手洗い、三密等の回避)とインフルエンザ予防接種によって発熱の機会そのものを少なくすることが必要です。また発熱したら他者への影響を十分に排した落ち着いた行動が求められます。体調不良の際には受診前に必ず電話連絡をお願いします。

須坂 腎・透析クリニック



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Posted by Kidney at 17:33│Comments(0)ひとりごと
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