2020年11月27日

晩秋に武漢の荒風再び

晩秋に武漢の荒風再び
11月下旬となりシラカバの黄色い葉はほぼ枝から地面移り、遅れてヤマモミジの紅い葉が主役になりました。朝晩の気温も徐々に下がり間もなく氷点下に到達しそうなので主役の座もそう長くは無いのかもしれません。




晩秋に武漢の荒風再び
クリニック正面、晩秋の景色。ジューンベリーの紅葉。




晩秋に武漢の荒風再び
そのすぐ横にドウタンツツジの紅葉




先月まで横這いであった新型コロナウイルス感染症が11月初旬から全国的に拡大し始めました。
晩秋に武漢の荒風再び
(東洋経済オンラインより)
11月26日には累積14万人を越えています。



晩秋に武漢の荒風再び
(東洋経済オンラインより)
陽性者数が増加すれば重症者数も増え、今後死亡者数が増加する可能性も十分にあります。欧米に比べてわが国の陽性者数や死亡者数はかなり少ないといえますが、それが安心して良い根拠にはなりません。沖縄の病院に勤務されながら厚労省の感染対策にも関わっておられる高山義浩医師の見解を紹介します。

「東アジアの死亡者が少ないのは、感染しても死なないからではありません。感染していないからです。それは、多くの死亡者を出している欧米諸国と致死率(感染者あたりの死亡者数)に大きな差がないことから分かります。
死亡率(人口10万人あたり死亡者数)について、アメリカ 75.7、イギリス 76.1、フランス 67.7、ドイツ 15.0、イタリア 73.9、カナダ 28.8です。一方、日本 1.5、中国 0.32、韓国 0.96、台湾 0.03です。たしかに桁が違いますね。台湾すごい・・・
ところが、致死率でみると、アメリカ 2.2%、イギリス 3.9%、フランス 2.3%、ドイツ1.6%、イタリア 3.9%、カナダ 3.7%であるのに対して、日本は 1.6%、中国 5.4%、韓国 1.7%、台湾 1.2%です。東アジアはやや低いですが、欧米との差は大きくありません。
念のため人口10万人あたりの感染者数をみてみましょう。あくまで検査で確認された範囲ですが、アメリカ 3,384、イギリス 1,976、フランス 2,992、ドイツ 940、イタリア 1,894、カナダ 771となっています。一方、日本 91、中国 6、韓国 56、台湾 3です。少なくとも東アジアでは、感染対策の徹底具合の差が如実に表れていますね。
当たり前ですが、感染者が少なければ死亡数が少ないわけです。東アジアでも、欧米でも、高齢者にとっては危険なウイルスです。できるだけ、感染を回避することが必要です。」


日本を含む東アジアで何故感染数が少ないのかについては、BCG説、交差免疫説、人種特異説の他にも社会的特性や民族性など様々な「Factor X」候補が推論されていますが未だに明らかになっていません。カミカゼと同じで現在進行中の第3波でも欧米並みの感染爆発を回避出来る楽観論の根拠は無いと言えます。




晩秋に武漢の荒風再び
(東洋経済オンラインより)
長野県内の陽性者数も増加傾向にあります。当初北信での感染者数が目立ちましたが11月下旬には全県に拡大しつつあり11月24日には長野県による新型コロナウイルス警報が発出されました。




晩秋に武漢の荒風再び
GoogleによるAI予測では月末には新規陽性者数は一旦ピークアウトしますが、その後漸増傾向に転じています。気温が低下し乾燥することでウイルス感染が流行しやすい厳冬期をこれから向かえるため、油断せず感染予防策を継続する必要があると考えます。



経時的に世界的な流行状況を見ると
晩秋に武漢の荒風再び
(FINANCIAL TIMESより)
北半球の国々では増加傾向が著しくなっています。



晩秋に武漢の荒風再び
(FINANCIAL TIMESより)
死亡者数も増加傾向を示しており感染者数を制御しないと結果として死亡者数の増加を招くことが示唆されます。




一方南半球の国々では
晩秋に武漢の荒風再び
(FINANCIAL TIMESより)
季節は北半球と逆であるため冬に向かうタイミングで感染者が大幅に増えていた事になります。ピークアウトしている国があるほか低下せず高めで推移する国もあり、感染制御が不十分な場合は冬期を過ぎても遷延化し多くの感染者が出現し続ける可能性を示します。




晩秋に武漢の荒風再び
(FINANCIAL TIMESより)
南半球の死亡者数の推移も概ね冬期にピークを形成しています。その後の推移は国による医療体制や予防に対する国民の意識の違いが影響しているかもしれません

北半球と南半球の違いから寒冷化が感染に一定の影響を与えている可能性は否定出来ません。しかし感染者数は様々な要因が作用し動的平衡を形成していると言えます。Gotoトラベル事業のあり方について経済とのバランスから継続と抑制の議論があります。ヒトが感染対策を取らず無防備に移動すると感染症の流行が空間的に拡大することは自明なことであり、移動を促す施策は感染を広める方向に作用します。一方で移動に伴う感染対策が十分に出来ていればその作用は限定的となり重症化リスクの少ないヒトが経済活動をはばかり無く行うことが可能でしょう。しかし感染が爆発的に広がれば個人レベルでは防御できない局面に到達してしまいます。

感染者が増加し重症化例も増加傾向にある現時点では動的平衡点を下げる施策が求められます。Goto事業のマイナス面は旅行や外食を推奨する余り油断を招いた点にあるのかもしれません。つまり緩和のスピードが速すぎた可能性があります。社会として油断なく感染対策を継続すること、可能な限り個人個人で自己防衛を徹底することが求められますが、一線を越えると再度非常事態宣言の様な大きな抑制策も回避不能となり得ます。





11月の治療指標の達成度です。
晩秋に武漢の荒風再び


晩秋に武漢の荒風再び

透析医会の指標ではiPTHの達成度がやや低下しました。前回9月の定期検査の際に異常低値がありPTH上昇に対する介入が甘くなった結果とも言えます。異常低値の検証は後述します。透析効率、貧血、リンに関してはほぼ変化はありません。独自指標では血清アルブミン値が漸増しており酷暑が過ぎて「食欲の秋」の好影響が出てきている印象を持ちます。尚、当院では透析終了時の採血は血流量を50ml/minに落として60秒経過してから行い再循環に因る影響を排しています。


前回iPTHの測定値が異常に低く検査の外注機関と連携して原因検索を行いました。採血管のメーカーが変わった以外に変更点が無いため、従来の採血管、新規採用の採血管、採血後酵素の失活の影響を受けにくいとされる血漿を検体とした測定(EDTA-2Na)の三種類で同時に採血を施行しました。
その結果
新規の採血管:117.7±77.5
従来の採血管:180.6±117.1
EDTA-2Na :210.8±135.5


測定結果は何れの採血管ともEDTAの測定値と0.98〜0.99という高い正の相関係数を認めましたが、乖離率では従来が13.6%に対し新規では47.0%と後者で著しく低値を示すことが明らかとなりました。経時的な検討はしていませんが新規採血管の血清成分ではiPTHの失活速度が早いなど何らかの原因で測定結果に負の影響を与えていると考えられます。外注検査委託先のご協力もあり次回の定期検査からiPTHはEDTAによる測定を行う事が可能となりました。



晩秋に武漢の荒風再び
屋内での感染予防に有効な換気ですが厳冬期での実施は室温の急な低下を伴い慎重に工夫して行う事が望まれます。換気の指標として二酸化炭素濃度の測定があります。室内では概ね1,000ppm以下が目標とされています。当院では二酸化炭素モニターを購入し治療室での測定を開始しました。院内は機械的に24時間換気が行われており、窓を開ける換気をしなくても二酸化炭素濃度は常に1,000ppm以下でした。更に1時間に1度窓を開放し換気を行うと室内の二酸化炭素濃度は外気とほぼ同じ400ppm台まで低下しました。本格的な冬を迎える前に室温への影響を極力抑えた換気方法について検討を行う予定です。



晩秋に武漢の荒風再び
陽だまりのコムラサキ




感染対策を強化すると経済が打撃を受け不景気が長くなると自殺者が増えるとの指摘を耳にします。これに対し「逆に感染対策を緩めれば自殺者が減るのか?」という疑問が湧きます。

自殺の原因別推移見ると、
晩秋に武漢の荒風再び
経済・生活問題(赤線)で年間5,000人弱、健康問題(緑線)で1万人強となっています。新型コロナウイルスが流行し始めてまだ1年経過していませんが国内で既に2,000人以上が死亡しています。感染が蔓延化して集中治療室が飽和すればそこで助かる人も入室出来なくなり死亡率は上昇します。コロナ以外の通常医療も逼迫するため健康問題の占める割合が増加することも予想されます。因って感染対策を緩めれば自殺者が減るとは考えにくく感染対策を行いつつ経済や生活を回す方策が望まれます。



最適解を導くには極めて難しい問題ですが
晩秋に武漢の荒風再び
今はハンマーを振り下ろす時期(いささか遅れすぎているかもしれません)であり、次のダンスはゆっくり踊る。そのために現実解として何が出来るのか政治家の方々に的確なタクトを振っていただくことを希望します。聴衆としては個々に要求される程度は異なりますが最大限出来る予防策を継続したいと思います。



晩秋に武漢の荒風再び
寒椿白



晩秋に武漢の荒風再び
寒椿紅



もうすぐ年末、ヒトの移動も多くなる時期です。高齢の方、持病を持つ方、当院を利用いただく方の半分以上はその両方に該当しますが、今年は大いに気をつけましょう。帰省者との面会も初詣もお節もリモートを活用して、安全な範囲で楽しみましょう。

須坂 腎・透析クリニック


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Posted by Kidney at 17:00│Comments(0)ひとりごと
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