2021年01月27日
人の世界、鳥の空間
2021年(令和三年)が始まりました。昨年の今頃は対岸の火事にしか見えなかった中華人民共和国湖北省の省都である武漢発祥の新型コロナウイルス感染症が全世界を巻き込み、100年に1度に相当するパンデミックとなってもうすぐ1年が経過します。
武漢由来の新型コロナウイルスに翻弄される人間の世界とは異なり、クリニック中庭の小さな空間では今季も冬鳥達が飛来するようになりました。昨年よりも降雪が早かったためか、昨年暮れには既に姿を見かけましたが年が明けて毎日のように訪れています。
メジロとスズメ。果物好きのメジロと穀類好きのスズメの近接ショットは意外と希です。今季は林檎を啄むスズメの姿を目にします。スズメは雑食性で都市部に生息する個体はサクラの花の蜜も食料にするそうなので、果物好きがいても驚くことはないのかもしれません。
メジロとツグミ。例年地べたを歩き回る姿が多かったツグミ、今年は林檎を狙っています。
スズメを二回り大きくしたようなサイズと色調のツグミ。
珍しくシジュウカラも来ていました。
(google COVID-19 感染予測 日本版より)
年末に新型コロナウイルス感染症の第3波ともいえる感染拡大が生じ、本年1月8日に首都圏に緊急事態宣言が発出され、14日から中京・近畿など対象府県が追加されました。年始直後のPCR陽性者数と比較すると緩やかに減少をしていますが、1月26日時点でのgoogleの予測では緊急事態宣言解除予定の2月7日以後漸増傾向に転ずる予測です。
(東洋経済オンラインより)
感染者数の低下傾向に加え全国での実行再生産数も1以下に低下しており、今回の緊急事態宣言は一定の効果があったようにも見えます。一方で感染者数は減少した物の高止まりしており、宣言の解除により再度感染拡大が生ずるリスクは高く十分な効果は得られなかったと感じます。
新型コロナウイルス感染症では治療に関する知見が広まってきた現在でも、感染者の10%前後は酸素投与の必要な中等症となり1%程度はICU(集中治療室管理)が必要な重症となります。単純計算でも全国で5,000人の感染者が出れば500人は入院が望ましい中等症に、50人はICU管理が必要となります。毎日500床規模の入院施設を用意し続けることは現実的では無く、感染者数を抑制しない限りいくら病床を増やしても追いつかないことは明らかです。入院適応者の入院調整に時間がかかり自宅や療養施設で急変〜死亡する事例が散見されるようになりました。短期的に病床を増やすことはマンパワーの面から難しいとされ、入院管理をしていれば救えていた命が失われる現実はしばらく続く可能性が高いと考えます。
(FINANTIAL TIMESより)
人口10万人あたりの発症数は欧米と比較し低いわが国ですが、第2波収束後に急に経済活動を許容した結果、今までに無い規模で第3波の襲来を受けました。
感染拡大に急ブレーキをかける「ハンマー」とその後緩やかに制御する「ダンス」。第2波以降の出来事はダンスの制御が不十分で巨大な第3波を招いたこと、第3波に対するハンマーが不十分なまま終わる可能性がある個の二点に集約されると考えます。次なる対策として、
1. 感染拡大の防止
・個人で出来る予防の徹底(手洗い・消毒、マスク、三密の回避)
・緊急事態宣言より強力なハンマー
・ハンマー後の慎重なダンス
2. 医療受け入れ体制の再構築
・公的病院のコロナ専門病院化
・病院間の役割分担
・人材配置の最適化
個人レベルにおいては油断せず感染予防行為を習慣化して継続することが求められます。社会においては更に一段感染者を減らすための介入(ハンマー)が必要と思いますが、強力かつ短期でないと医療以外の社会活動が持たない危険性があります。ハンマーの後は十分慎重に社会活動の枠を広げる必要があります。人の移動は必ずウイルスの移動につながるためGoto事業の復活はその部分を認識した制度改革をしないと厳しいでしょう。京大の西浦教授のグループがJ. Clinical MedicineにGoto travelと感染拡大の可能性について論文を発表しました。Gotoを原因とは結論付けていませんが可能性が指摘される以上は前回同様の展開はリスクが大きいと考えます。国際的な人の移動を伴うオリンピックがどれだけのリスクを内包するかについては述べるまでも無いでしょう。ワクチンが全世界的に普及し比較的安全に新型コロナウイルスと人類が共存できるまで無期限停止が妥当と個人的には考えています。
医療体制の整備は感染がこれ以上拡大するならば東京都や大阪府の様に1病院まるごとコロナ専門病院化することが合理的に思います。新型コロナの重症度によって病院を振り分け、敢えて新型コロナを受け入れない後方支援型病院を設定した松本モデルも理想的ですが急ごしらえで作られたモデルでは無くかなりの準備期間の上に辛うじて機能している点は考慮すべきでしょう。同じ様なモデルが北信、南信にも独立して組織されると有事対応が円滑に進むと考えます。マンパワーも大きな問題です、新型コロナウイルス感染症を専門的に担当する病院に県内の他の病院や比較的余力のある県からDMATを派遣してもらう事も選択肢となるかもしれません。
厚労省から2020年12月時点の
「新型コロナウイルス感染症の”いま”についての10の知識」
という分かりやすい解説が出ました。
https://www.mhlw.go.jp/content/000712224.pdf?fbclid=IwAR1mnN04GNBn9OOzJAoGep6DRX0tGI2JReNi00lF9zik_RhrchWjMTRi940
是非、ご参照ください。
今月の治療指標の達成度です。
年越しの影響かいつもより血清P高値のケースが多かった印象です。普段と食事内容が変わるためある程度やむを得ないと考えており、来月以降も高値が継続する場合はリン吸着薬の増量や条件が許せば透析量のアップを検討します。ただし既にPTHが高値のケースでは今月の定期処方で対応します。そのintact-PTHは今月から血漿を検体として測定しています。昨年採血管の変更でiPTHが異常に低下したため採血管の違いが測定結果にどれだけ影響するか検討したところ、血漿での測定が最も高値を示しました。血清検体では酵素の失活により測定結果が低下するため血漿での測定を採用した経緯があります。そのため今月のiPTHは従来よりも高く達成度も低下しています。早速今月の定期処方に反映させてコントロールします。
パルスオキシメーターについて
新型コロナ感染と診断された方が自宅療養または施設療養中に急変して亡くなる痛ましい報道があり、呼吸機能の低下を定量的にモニターできるパルスオキシメーターの重要性が強調されています。当院でもパルスオキシメーターの購入について何件か相談を受けましたが、現時点では推奨しません。
現在重要視されているのは感染と診断された方の経過観察に必要という点であり、個人が日常的に測定する事ではありません。パルスオキシメーターで測定する酸素飽和度は肺の機能だけでは無く心臓の機能にも影響されます。どうしても飲水量が多く体重増加が多くなりやすい中2日空きの月曜日や火曜日の透析前には、体水分が過多となり心肺機能に影響し酸素飽和度が低下しているケースも比較的良く見られます。その場合は除水により回復します。パルスオキシメーターは通販でも購入可能ですが今は真に必要な人の手元に行き渡るように配慮しましょう。
鳥たちの空間は騒がしい人の世界にとって一服の清涼剤です。
大声で鳴きやや気性の荒いヒヨドリも常連です。ムクドリとバトルもします(笑。
新型コロナワクチンの接種が各国で開始されています。副反応の報告も出ていますが他の薬品と比較して、とてつもなく危険という印象は受けません。決め手となる特効薬が無い現状ではワクチンを打たないリスクが極めて大きいことから、多くの方が接種し感染拡大に一定のブレーキとなることに期待したいと考えます。
須坂 腎・透析クリニック
Posted by Kidney at 17:41│Comments(0)
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