2021年04月27日
対変異株政策と踊らぬ国民
朝夕の気温は初春のままに日中は初夏を思わせる陽射しも感じ気温差に体がまだ慣れない時期です。今年も藤の花が開花し始めました。
4月初旬の玄関前、ジューンベリーと沈丁花。
一週間と持たず散るジューンベリーの花は儚さと可憐さを持ち合わせています。
この頃はライラックもまだ蕾。
4月下旬となりハナミズキも開花、今年は花付きが少なめです。
ライラックも開花し芳香が漂います。
新型コロナウイルス感染症 国内での発生状況(yahooより引用)
4月25日より3度目となる緊急事態宣言が東京、大阪、京都、兵庫に発令されました。先の2回目の緊急事態宣言では十分感染者数を抑えられずに宣言自体の効果が怪しくなって打ち切りになった印象が強く残ります。その後打ち出された蔓延防止頭重点措置も機能せず3度目に踏み切らざるを得ない状態に追い込まれました。
新型コロナウイルスの感染制御にハンマーとダンスという考え方が導入され1度目の緊急事態宣言の際のハンマーは比較的機能した様に思います。これには慣れというマイナス要素のない「初回」効果も寄与したかもしれません。しかし初回からハンマーに続くダンスが上手くいきませんでした。
Goto事業が直接感染拡大に関与した明らかな証拠はありませんが必要以上に感染に対する国民のガード意識を下げてしまったことは否めません。そして先に述べたように2回目のハンマーは極めて緩く国民の危機感が麻痺したままbroken danceに突入し1ヶ月を待たずして次のハンマーは振り下ろされてしまいました。
4月24日付けの産経新聞のコラムで「今、なすべきことは、死者を減らすことに全力を尽くすべきべき」それには「病床を増やし、医療従事者の数を増やすしかない」とし休業補償に回される予算を医療関係に充てるべきとの東大名誉教授の発言を紹介しています。またそれが出来ない理由として、自治体の首長は「やった感」を演出しないと次の選挙で落選してしまうため根本的な対策よりも目立つ対策をやりたがると述べています。
後半は当たらずしも遠からずですが前半部分には違和感を覚えます。同じ違和感は飲食業も頑張っているのだから医療も頑張らなくてはならないという感染者数の増加と治療のための受け入れ施設の拡充を等価に考えている意見や、クラスターの発生の大半は施設や病院であり飲食は2%程度との円グラフの結果を考察することもなく受け入れ飲食における予防の重要さを軽視する意見に対しても感じるところです。
毎日5,000人の新規感染者が発生した場合に70〜80%位の人は軽症か無症状で治癒するでしょう。しかし終始無症状の人発症前の人も感染源となるため診断されたら感染を広げないように2週間程度人との接触を避ける必要があります。感染率が高くなると誰もが無自覚の内に感染を広げてしまうリスクを持つことを忘れてはならないのです。そして15%前後の人は酸素投与の必要な入院管理が必要な中等症を呈し、5-10%はICU管理となるでしょう。つまり5,000人の感染者が出ると5%に当たる250人くらいは重症者病棟に入院する可能性があります。重症者は数週間以上の入院が必要となるため最短2週間で退院出来たとしてもその間250人/日×14日=3,500床の重症用ベッドが必要となり、47都道府県で割ると1自治体あたり約75床、感染者が10,000になればその倍150床、1年掛ければ箱だけは用意出来るかもしれませんが人員の確保は到底不可能です。真に機能する病床を都合良く出せる打ち出の小槌は都合良く存在しません。即ち感染者数の制御無しに受け入れ病床の機能維持は出来ません。それでも増やせというならば野戦病院レベルのベッドが増産されるだけです。欧米と比較して云々という意見は欧米での死亡者数を見てからにしましょう。欧米でも医療崩壊を起きており高度医療が機能していれば救えた命が死亡者としてカウントされています。
次にクラスター発生の場が医療機関や高齢者施設に多い理由について。感染者が出ると保健所は感染者の周囲に更に感染者がいないか、感染する可能性の高い濃厚接触者がいないか調査を始めます。感染者が何処にいて誰と接触したか、その情報に基づき調査は進みます。つまりそれらの情報が把握し易ければクラスターも把握しやすくなり逆に情報収集が困難であればクラスター発生を見逃すことにもなります。病院や施設は誰がいつ何処にいたといった情報が極めて把握し易い環境です。つまりクラスターとして見つけやすいことになります。一方で不特定多数が利用しその記録も記憶も残らず、場合によっては情報を隠匿してしまう環境ではクラスターを証明することは極めて困難になるでしょう。見えにくいクラスターです。クラスターの把握に見えやすい環境と見えにくい環境がある以上はその結果を等価に評価することは結論を誤る可能性があります。医療機関や施設は相応の感染対策を行っておりそれでもクラスターが発生する事実は無症状で感染源となるこの感染症の予防が非常に難しい事を示唆します。むしろ見えにくい部分への対策を厚くし感染者数を抑制することで施設等への飛び火を少なくすることが大切と関します。
その見えにくい部分とは三密環境そのものです。いつも飲食業がやり玉に挙がるのは悲しいことですが三密環境になりやすい場面の一つであり頻度も高いことを考えるとやむを得ない部分もあります。であるからこそ対策は「やっている感」を演出する大鉈ではなく、実効性のあるきめ細かな対応が必要でしょう。どうすれば三密=飛沫感染が成立する環境を回避出来るかがキーポイントであり、換気能力に応じた入店人数制限、大規模宴会の禁止、アルコール提供の禁止よりも三杯ルール(武蔵屋)のような泥酔の回避などやり方はいくらでもあるように思います。もう一つ大切なのはお店の努力だけでは限界があり利用者側の意識の改革も求められることです。
ワクチン接種は普及するまでのもう一歩、自粛疲れなど言わずに利他的な振るまい方を利用者も行えば悲観的なハンマーとダンスの繰り返しにも出口が見えてくるのでは無いかと思います。
やや遅咲きの水仙
チューリップ
今月の治療指標の達成度
透析医会の指標では貧血、血清リン、透析効率、透析時間の項目で90%以上の達成度を維持しています。当院独自指標では栄養指標の一部が若干低下しており推移を見守りたいと考えています。
COVID-19の第4波が全国的に広がる中で、当院ではガードを下げる事なく感染対策を行っています。また利用者の方にも普段生活を共にしない人との会食(帰省した家族、地域の会合)やカラオケなど感染の契機となる三密空間を回避した生活を呼びかけています。
ライラック
感染力がより高い変異株への対応が求められている中で3回目の緊急事態宣言が今ひとつ国民に響いていない様に思います。長引く自粛で感染に対するガードが下がってしまっているのかもしれません。感染者数が急増すれば集団心理が働きガードが上がるかもしれませんが出来ればその前に一人一人可能な範囲で感染予防への意識を高めて欲しいと願います。
自粛ではなく自主的に感染リスクの高い環境を回避出来れば規制は不要です。
規制に伴う助成金の原資は税金、いずれ増税で全ての国民に跳ね返ってきます。
政治家が飲食店が医師会が・・・誰かを悪者にする前に考えましょう。
「敵は新型コロナウイルス」です。
須坂 腎・透析クリニック
Posted by Kidney at 17:11│Comments(0)
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