2021年06月26日
午後の雷雨、嵐の前の水無月
梅雨入りが宣言されここ数日は大気が不安定となっています。午前中は爽やかな晴れ間も午後になると黒雲が湧き突然激しい雨が降り雷が鳴ります。朝の天気に安心して雨具の用意を怠ると午後にひどい目に遭う様に、緊急事態宣言から蔓延防止等重点措置に移行して気を抜くと2週後に痛い目に遭う、今回もこの繰り返しになりそうで危惧しています。
写真はジューンベリーの名の通り6月中旬に撓わに実を付けました。
この時期は紫陽花の季節の始まりでもあります。
咲きかけの紫陽花をマクロで撮影。
他の場所ではピンク色の紫陽花。
ガクアジサイも。
マツモトセンノウ
遅ればせながらわが国でも新型コロナワクチンの接種が本格的となり徐々に接種率も上がってきました。
NHK新型コロナWEBサイトより
とは言っても全人口に占める接種者の割合も2回目で10%弱と集団免疫の獲得の目安とされる50〜60%にはほど遠いのが現状です。
医療従事者等では480万人を対象に先行接種が開始され、2回目の接種者は460万人を越えました。およそ96%の達成率で有り医療従事者の感染はかなり抑制されると期待出来ます。
医療従事者に次いで優先接種が開始された65歳以上の高齢者でも接種率が増加傾向に有り1回目の3週間後に2回目の接種を行うことから7月半ばには50%を越えて来そうです。重症化率の高い高齢者層でワクチンの効果が発効すれば医療現場への負荷が低下すると期待されます。
東洋経済オンラインより
一方で東京都の感染者数は既に増加傾向にあり前回の緊急事態宣言終了時と同様に、終了を待たずして感染に対するガードが下がり感染者数は増加傾向に転じました。イギリス株(α)株よりも感染力が高いインド株(δ)株が既に国内に入り込み市中感染を起こしている現状から次の感染拡大(第5波)は4波を超える規模に拡大する可能性があります。
SankeiBizより
第4波の特徴として従来株から変異株(イギリス株)に流行の主体が移り、60歳未満の入院患者数が増えたことが挙げられます。従来株では60歳未満は比較的速やかに回復して退院したのに比べて第4波では症状が重く治療期間が長引きました。現在も流行の主体はイギリス株ですが60歳未満のリスクも高まっており、ワクチン接種対象者を柔軟に拡大することが望まれます。
外来でも30〜40代の方にワクチン接種の必要性を質問される機会が多くなって来ました。
1. 前述の通り変異株への置換により若年でも重症化例が増えていること
2. 重症化しなくても永続的な嗅覚・味覚障害、慢性疲労、brain fog(何となくぼんやりして集中力に欠ける)などの後遺症が出る可能性
3. ワクチンの副反応は概ね軽微でアナフィラキシーは100万回に4-5回程度と極めて少ない事
4. ワクチンは個人の防御のみならず集団免疫獲得による社会的集団の防御の意味を持つこと
以上の理由から私は接種を受けることを推奨しています。メディアやSNSではとかく副反応をセンセーショナルに取り上げて有効性と危険性を比較した科学的な議論が十分出来ていないと感じます。先日はmRNAワクチン接種後に心筋炎や心嚢炎が低頻度ながら一定数みられることが海外で報告され早速国内でも報道されましたが、
https://www.tokyo-np.co.jp/article/112400?fbclid=IwAR2FxXhM3gGqezqWb7WmSg-AhPZ4BesfC-vimzDDdFXnPLS6PcnK2kOVCo4
2000万回を越える接種に対し12件の報告で接種100万回あたり1件以下の発生率となります。
水泳やランニング中に死亡する確率が100万人に1人、
バンジージャンプで死亡する確率が50万人に1人、
スカイダイビングで死亡する確率が10万人に1人。
また飛行機に乗って死亡事故に遭う確率が100万回乗って9回程度、
自動車運転免許を持っている人で死亡事故を起こす人は100万人あたり80人くらいとされます。
ワクチンは決してゼロリスクではありませんが重い副反応が起こる確率は100万回に数回程度と考えて良いでしょう。最終的には個人の判断ですが私はワクチン接種のメリットは健康被害のデメリットよりも大きいと考えます。私自身もワクチンの有効性を認識し既に2回接種を終えています。
今月の治療指標の達成度です。
透析医会の指標を全て90%以上を維持しています。Kt/V平均値が久しぶりに2.0を下回りましたが新規血液透析導入者が何名か編入した影響と、高齢となり食事摂取量が低下傾向に有り特に透析後のカリウム値が3.0mEq/Lを下回るケースで透析量を下方修正した結果が関与しています。栄養指標は概ね横這いですがこれから暑くなり食欲が低下する時期であることを考えると、今のうちにしっかり栄養を補充して欲しく回診でも強調しました。
新型コロナウイルス対策も手を抜くこと無く継続中ですが本来の業務も通常運転です。
今週、当院でも透析患者さんへの個別接種が始まりました。ファイザー・モデルナのmRNAワクチンでは1回目の接種では中和抗体の形成はそれほど高く無い一方で、2回接種後7日経過するとかなり高値となりインド(δ)株への効果も報告されています。従ってFull vactinatedは2回接種後7-14日経過してからといえます。
また透析患者ではファイザー社製ワクチン接種後の新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価は対照群に比べて有意に低いとの報告がありました。
「ワクチン接種後の液性免疫反応を評価。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗スパイクIgGアッセイ(アボット社製)を用いて、2回目接種30日後(中央値)に血清学的検査を実施した。その結果、対照群の全例、透析群の96%が抗体反応を示した。IgG値は対照群(中央値7401)に比べて透析群(中央値2900)で有意に低く、Mann-Whitney U検定で統計的有意差が示された(U=1238、P<0.001)。IgG値が下位四分位に入るオッズは、高齢者(オッズ比:1歳当たり1.11、95%CI 1.08-1.20、P=0.004)および対照群に比べて、透析群(同2.7、1.13-7.51、P=0.05)で有意に高かった。透析患者で、高齢およびリンパ球数減少に抗体反応低下との関連が示された(オッズ比:1歳当たり1.22、95%CI 1.13-1.68、P=0.03、リンパ球数10-e3/µL増加当たり0.83、0.58-0.97、P=0.05)。」
Humoral Response to the Pfizer BNT162b2 Vaccine in Patients Undergoing Maintenance Hemodialysis. Ayelet Grupper et.al. Cin J Am Nephrol 2021 Apr6
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33824157/
透析患者ではワクチン2回接種後も当面は現状の感染予防対策の継続が望ましいと言えます。
ラベンダー
第2波の後に行われたGoto政策は人流の拡大と感染予防意識の希薄化の両面から第3波の引き金となりました。東京では既に感染者が増えつつあり来月には流行の主体がインド(δ)株に置き換わるとされています。ウイルスは人が運びます、世界的にもパンデミックが収束しない中で大きな人の流れを作る東京五輪をこの時期に開催することは感染対策の面からは大変リスクの高い行為です。最低でも無観客として国内での人流を抑制すべきですが既に海外から入国した選手に陽性者が出ており、空港検疫の不手際から輸送に携わった運転手など濃厚接触者が出てしまいました。隔離免除の特例入国者の中からも陽性者が出ておりバブル方式そのものが機能するのか危惧されます。。
ブラジルで行われている10カ国が参加するサッカー南米選手権(コパ・アメリカ)でも6月21日選手・関係者140人が新型コロナウイルスに感染していることが明らかとなりました。13日の開催から約1週間で検査総数約15,000回のうち0.9%の陽性率です。参加選手が規則に違反して美容師を隔離内に招いたとの報道です。大会も開催地も異なるため単純比較は出来ないにしても東京五輪で9万人の渡航者で0.9%の陽性者が出たとすれば810名に相当します。隔離されたバブル内が汚染されればむしろ感染リスクは高くなり、バブル方式が大規模イベントで機能する保証はないとの指摘も出ています。
感染対策にオリンピックという免罪符を作って良いのでしょうか。
感染拡大防止のため国民には我慢を強いながら、五輪開催を強行するのは矛盾に感じます。
国難を背負い込んでまで開催しなければならない五輪ならば、中止では無く廃止を希望します。
If the Olympic is held with the spread of infection allowed,
I prefer to abolish it rather than postpone or cancel.
須坂 腎・透析クリニック
Posted by Kidney at 14:19│Comments(0)
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