2021年07月23日
猛暑来襲の文月、ゲームチェンジャーとしてのワクチン
梅雨明けと共に急加速でやってきた猛暑、1枚目には涼しげな写真を選んでみました。やや盛りを過ぎましたがギボウシの花です。
エゴノキの下で桔梗が咲き始めました。背の高い個体は白い花。
株元には青い花が咲きます。花弁の色素と草丈の遺伝子にリンクがあるのでしょうか?
長野県透析研究会誌にて2019年度に引き続き2021年度も当院発表内容が優秀論文として選ばれました。
2019年10月の台風19号による下水道使用制限に対応した透析治療を総括した発表でした。さわりは同月の当ブログにもあります。
http://kidneysuzaka.naganoblog.jp/e2430319.html
多くのインフラに依存する透析治療では、災害に対する備えと対応が極めて大切です。臨機応変に取り組み、対応して来た当院の方針が評価されたものと考えています。
7月14日(月)須坂市はゲリラ豪雨に見舞われクリニック周辺でも落雷が多発しました。
その影響か落雷の後に商用電源が止まり瞬間停電かと思いましたが復帰せず10数秒後に非常用電源が起動しました。
その後10分弱で商用電源が回復しましたが非常用電源のバックアップで透析治療が継続出来ました。非常用発電装置を実装してから初めての起動でしたが、備えあれば憂い無しを実感した出来事でした。
当院の発電機は補助タンクを備えており、万が一この日の商用電源復帰が翌日まで遅れても夜間透析まで対応可能でした。
東京五輪前の7月12日、東京都に4回目の緊急事態宣言が発令されました。飲食業を中心に経済活動への制限が継続される一方で、感染リスクを伴う五輪が開催されるというダブルスタンダードに国民の疲弊感は増して感染抑制効果は当然期待の出来るものではありません。
ワクチン接種が進み高齢者層の感染減少が明らかとなりましたが、ワクチン未接種の40〜50代以下の感染者数が増えています。従来株であればこの年代での重症化率は低いとされていましたがインド株(δ)株では中等症から重症例も増えています。国内の重症者数は今のところ低い数値を維持していますが、
1. これまでのパターンでは感染者増から2週程遅れて重症者数が増える傾向にある
2. 都内では既にコロナ病床にオーバーフローの兆しがある
3. 救命困難が許容されうる高齢者とそうでない若年層では治療内容が異なり、治療現場の負担が大きくなる
などの理由から高齢者や医療者限定でワクチン2回接種率が高くなっただけの状態で、全年齢の感染対策が円滑に進みうるのか注視が必要です。この時期に五輪を行うのであれば半年早くワクチン接種を開始すべきでした。
国内でのワクチン接種率です。2回接種が終了した人は23%になりました。先月のブログでは9.17%でしたが着実に増え続けています。新型コロナウイルスの基本生産数R0を2.5とすると(一人の感染者から2.5人に感染する)集団免疫閾値(1-1/R0)×100は60%となり人口の6割程度に免疫がないと成立しないことになります。R0は人口が均一な集団で何の感染制御も行わずに感染拡大した場合の数値です。しかし人口は感染に弱い人から強い人まで種々雑多な集団であり、感染拡大により個々の感染防御意識が高まるなど一様に感染拡大が起こるわけではありません。そこで実際の感染状況から実行再生産数Rtが計算されます。東洋経済オンラインによると現在のRtは1.36のため集団免疫閾値は26.5%となり当初言われていた60%より随分低くなります。現在ワクチン2回接種者が23.1%のため閾値までもう少しとも言えますが、Rtは経時的に変化するものであり感染が発生する背景も均一でないため、64歳以下でのワクチン接種率の増加がゲームチェンジャーとして鍵になると考えます。
NHKよりワクチン接種に対する考え方
一定の割合でワクチン接種に迷いを感じる人がいることも事実であり良質な科学的情報に基づき判断をすることが大切です。免疫学の権威で大阪大学の宮坂昌之先生が非常に優れた情報を発信されているので引用します。
*****阪大宮坂昌之先生のFacebookより引用*****
以下、8月中旬に刊行される拙著『新型コロナワクチン 本当の「真実」』の前書き部分です(パロディー本のような題名ですが、中身はパロディーではありません )。
「新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)が2020年1月にパンデミック(世界的大流行)を起こしてから1年半以上が経過しました。発生当初は春になって気温と湿度が上がれば自然に収束するという楽観的な見方もありましたが、燎原の火のように広がった感染はとどまることなく世界を覆い尽くし、2021年7月15日時点で、確認されているだけで感染者は1億8355万人、死者は400万人を突破しました(米国のジョンズ・ホプキンス大学調査)。未確認の感染者や死亡者を含めれば、その被害はさらに甚大なものでしょう。厄介なことに、世界各地で次々に感染力の高い変異ウイルスが誕生しており、これまで比較的感染者が少なかった地域でも感染が広がっています。
しかしながら、2021年に入ると、危局を打開する「ゲームチェンジャー」が登場してきました。新型コロナワクチンです。一般的なワクチン開発には最低でも10年以上の時間がかかるため、どんなに急いでも数年程度かかるといわれてきました。しかし、この予想は良い意味で完全に裏切られました。ウイルスが報告されてから1年も経過しないうちに、有望なワクチンが次々に登場しているのです。
なかでも米国の製薬会社であるファイザー社やモデルナ社が開発した「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン」は優れた実績をあげています。ワクチンには感染予防、発症予防、重症化予防がありますが、両社のmRNAワクチンは、その3つの働きともきわめて高いのです。私自身、これほど短期間でここまで優れたワクチンが誕生するとは思いもよりませんでした。
正直にいうと、2020年末までは、私はワクチンに対して慎重な意見を持っていました。安全性についてのデータが十分でなく、確信が持てなかったのです。同年11月9日、ファイザー社は、ドイツのバイオベンチャーのビオンテック社と共同開発するワクチンが、第三相の臨床試験(治験)で感染を防ぐ有効率が90%を超えたと発しました。これを後追いするように、モデルナ社は11月16日、同社が開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、94・5%の予防効果がみられたとする臨床試験の暫定結果を発表しました。
同じRNAウイルスであるインフルエンザ向けワクチンの有効率は40〜60%程度しかないことを考えると、これは驚くべき数字でした。しかし、その時点では安全性に関するデータがまだ十分ではありませんでした。ワクチンは健康な人を対象に接種する医薬品ですので、きわめて高いレベルの安全性が求められます。接種することで重篤な副反応が出たのでは困ります。新型コロナウイルスが従来にない特徴を持ったウイルスであること、mRNAワクチンが世界で初めて実用化されるワクチンであること、開発期間がきわめて短期間で、副反応について臨床治験データが十分でないこともあり、2020年11月17日衆議院の厚生労働委員会に参考人として出席した直後に毎日新聞の取材を受け、「私は当面はワクチンを打たない」と明言しました。
しかし、その後、世界に先がけて接種を始めたイスラエル、そして、それに続いた英国、米国のデータが集まってきました。2021年2月には、米国のCDC(疾病対策センター)が、約2300万人の副反応データから、「重篤な副反応の頻度は従来のワクチンと同等」という分析結果を発表しました。ファイザー社やモデルナ社の第三相臨床試験の治験者数をはるかに上回るビッグデータを用いた分析です。懸念された副反応は深刻なものではなく、臨床試験のデータどおりにこのワクチンがきわめて優れていることがわかってきました。こうした情報を総合的に判断して、私は、意見を大きく変えました。
日本で接種が進んでいるmRNAワクチンは、「感染予防」「発症予防」「重症化予防」というワクチンに求められる「3本の矢」がすべてそろっています。個人的な見解ですが、「打たないという選択肢はない」というのが率直な感想です。すでに私は5月27日に第1回の接種を受け、2回目の接種を6月17日に終えました。1回目は軽い腕の痛みがありましたが、熱や倦怠感もなく、腋の下のリンパ節が少し腫れたぐらいでした。2回目の接種ではリンパ節が1回目よりも大きく腫れ、2日目の夜には38℃の発熱がありましたが、翌朝には回復しました。以後、特に問題もなく普段どおりの生活を送っています。
6月24日時点で、全世界で新型コロナワクチンが、少なくとも27億8911万回分接種されていますが(日本経済新聞&英フィナンシャル・タイムズ集計)、既存のワクチン以上の深刻な副反応がなく、ワクチン接種に伴う副反応のリスクよりも、ワクチン接種によって得られる利益のほうが大きいという科学的知見が集積しています。
ただし、本書のなかでも繰り返し説明していますが、ワクチンは決してノーリスクではありません。きわめて頻度が低いものの100万人に数人程度で、アナフィラキシーショックとよばれる重篤な副反応が起きますし、発熱、頭痛、倦怠感といった軽微な副反応は一定の割合で発生します。アレルギー症状を起こしやすい遺伝的体質を持った方や体力の落ちた高齢者もいらっしゃいます。そして、リスクの捉え方は人それぞれです。最終的に接種するか、見送るかは個人が判断するべきことで、決して同調を求めるものではありません。科学的エビデンスのある情報を吟味して、納得できなかったり、不安感が残るのであれば、接種しなければ良いのです。
本書は、免疫学者である著者が、新型コロナウイルスとワクチンに関する最新の科学的知見を分析して、一般の方々にぜひ知っていただきたい情報をまとめたものです。執筆の根拠としたのは、信頼できる科学論文誌や研究機関のデータと、免疫学者として50年以上基礎ならびに臨床研究を続けたことで得た知識と経験です。
「ワクチンを接種すべきか、それとも控えるべきか」悩んでいる方も多いと思いますが、本書を読むことで不安感や疑問点のかなりの部分が解消されるものと思います。ワクチンを手放しに礼賛するのではなく、報告されている副反応や未確定な部分についてもできるだけ詳しく解説しています。
新聞、雑誌やインターネットには、新型コロナウイルスとワクチンに関するさまざまな情報が飛び交っていますが、その内容は玉石混淆です。誤解を恐れずに言えば、「玉」はごくわずかで、「石ころ」だらけという悲惨な状況です。また、専門家がマスコミを介して発する情報のなかにも科学的なエビデンスが著しく不足しているものも少なくありません。さらに最近は、ワクチンにマイクロチップが組み込まれているといった荒唐無稽な陰謀論や一見すると医学的エビデンスがあるように見せかけたフェイクニュースも登場しています。
ネットに氾濫する情報に比べると、信頼度が高いとされている書籍の中にも、長年免疫を研究してきた著者からすると、眉をひそめるような作品も少なくありません。とりわけ、新型コロナワクチンの本格的な接種に合わせて刊行された「嫌ワクチン本」は、科学的に間違った記述や偏見に満ちており、座視できないレベルのお粗末な内容です。厄介なことにこうした著者が知名度の高い医師(信頼されているという意味ではありません)だったり、有名な大学や研究機関に所属していた人だったりするのです。彼らの作品を読むと、根拠とする論文も挙げられ、もっともらしい医学的な分析もあるので、専門知識のない人が読むと信じ込んでしまう恐れがあります。本書では、こうした「嫌ワクチン本」を科学的なエビデンスに基づいて、何がどう間違っているかを解説しています(第7章)。
新聞やテレビ、特にワイドショーを見ると、新型コロナウイルスの恐怖を煽り立てる番組が多く、気分が滅入ってきます。日本では、感染は依然として拡大傾向にあり、気が抜けない状況が続いていますが、私はそこまで悲観的になる必要はないと考えています。紆余曲折はありましたが、ワクチン接種が急速に進められており、2021年後半には、その成果がはっきりと見えてくるはずです。「明けない夜はない」と言われますが、「夜明け」は間近に迫っています。私は、人類は新型コロナウイルスを克服できると確信しています。」 2021年7月 宮坂昌之
この本の中では、単にワクチンがいいと言っているのではなく、正しい知識を得た上で、納得された方のみに接種をお勧めしています。
https://books.rakuten.co.jp/rb/16820335/?fbclid=IwAR2qXTXImJ0DN3UMqCHdEjqEFNmkn_Z7FF3taRgjWaV0GEWA7Vrs3Hbf62Q
非科学的なトンデモ本が多い中でこの本は正確な情報を得たい人に大きな福音となると考えます。
7月の治療指標の達成度です。
梅雨明けとともに猛暑がやってきました。気温が高くなると軒並み栄養指標が低下して来ます。また暑さを凌ぐ手段として冷たい水分を求める機会も多く、食物摂取が少なめにもかかわらず体重増加が多くなるケースも見られます。透析治療は毒素や余剰水分の除去を目的とした「引き算」主体の治療であるため、カラダへの「足し算」である経口摂取はバランスの良い栄養補給と水分制限が大切です。
1. 血糖値・中性脂肪に余裕のある方には主食(カロリー)アップをお勧めします。
・糖尿病が無ければ間食でカロリーを補足してもOKです
2. 尿酸値・血清P値に余裕がある方には蛋白質摂取のアップをお勧めします。
・尿酸値に対して血清リンが著明に高い場合は栄養にならないリンを摂っているかもしれません
・無機リンを使用した添加物の多い加工品、骨ごと食べる小魚や缶詰の中骨に注意→栄養にならないリンが多く取り過ぎないように
3. Kの低い方には野菜や果物の摂取をお勧めします。
・特に透析後のカリウム値が3を下回る方、ジギタリス製剤を使用している方は要注意
4. 冷水を飲んでも体は効率よく冷えません、室温と湿度を適切に調節しましょう。
・温湿計を常備し室温28℃以下、湿度60%以下を目安に設定を
・エアコンの設定温度では無く温湿計の数値を参考にしましょう
・透析患者は尿量が少ないかゼロのため元々体内に1.5L程度水分が貯蓄しています
・そのため脱水にはなりにくく、熱中症予防には補水よりも室温管理が大切です→脱水がなくても熱中症は起こります
当院では今月末には多くの透析患者さんのワクチン2回目接種が完了します。インド(δ)株が本格的に流行の主体に置換する前に対策を取ることが出来そうです。とはいえ全体的なワクチン接種率はまだ低く供給面での問題もありますが、科学的に正確な情報の元に多くの方が接種の判断をしてより確実な集団免疫の獲得に繋がる事を希望します。
須坂 腎・透析クリニック
Posted by Kidney at 16:24│Comments(0)
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