2021年10月30日

波間に考える今後の展望

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2021年10月は中旬まで比較的気温が高い日が続きましたが後半になりやっと秋らしい気候になりました。写真はクリニック玄関脇のドウタンツツジ、やっと燃えるような赤い葉になりました。


波間に考える今後の展望
一方で中庭の紅葉は一部のみ、シャラの木が一番進んでいます。



第5波におけるワクチンの役割
国内の新型コロナ感染症は東京五輪開催期間(7/23〜8/8)に爆発的に感染が増えた所謂第5波が急速に収束し経済活動に関わる規制も緩和されつつあります。オリンピック閉幕からパラリンピック開催期間まで国内の感染状況は悪化し必要な医療を受けることの出来ない医療崩壊も一部で発生しましたが、同時にワクチン接種率は他の先進国と比較しても早いスピードで上昇し10月28日現在で全人口の70.7%が2回接種を完了しました。
波間に考える今後の展望

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(NHK特設サイトより)
重症化しやすい65歳以上の高齢者に限っては2回接種率が90%を越えており、第5波において高齢者を含むワクチン接種者の重症化例や死亡例が極めて少なかった要因でもあります。


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(NHK特設サイトより)
赤の実線で示されるわが国のフルワクチン(2回接種して[2週間経過した状態)者の割合は立ち上がりこそ諸外国に比べて遅れましたが直線状に増加し、欧米で見られる接種率70%を越えたあたりから見られる上昇の鈍化も今のところありません。


第5波では感染者数が急速に拡大したことで首都圏など人口密集地で医療崩壊を生じましたが、全体的にはそれまでの流行と比較し重症化例や死亡例の割合が少なかったことが特徴としてあげられます。
厚労省のHPより引用した第5波までの新規感染者の日別の推移を示します。
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次に入院治療を必要とする感染者数の推移です。
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更に重症者数の推移です。
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前2回の波に比較して重症者数の割合が減少しています。ワクチン接種率の高いイギリスやイスラエルで生じている感染者数の再拡大の中で注目すべきは、重症化率や死亡数がどの程度軽減されるかです。mRNAワクチンは接種から6ヶ月程度経過すると中和抗体量が低下し感染予防としての力が低下するとされます。一方で重症化予防としての効果は余り下がらず感染者数が増加しても重症化率が抑制されれば医療体制への負荷が軽減されることが期待出来ます。

またわが国でも3回目の接種が議論され10月28日の報道では2回接種者全員がその対象になる方向で議論が進んでいるようです。ブースター接種により感染者数そのものを抑制しつつ基本的な感染対策を継続する事で経済活動の自由度が持続的に上昇することが期待されます。しかし致死率が1/10になっても感染者が10倍に増えてしまえば結局同じ事になります。昨年のGoto事業後の様に急な抑制解除の風潮が強まると、感染に対するガードが下がり過ぎてしまい再び経済に急ブレーキを掛けてしまうかもしれません。故に基本的な感染対策の継続が求められ、また次の流行は免疫を獲得していない人々から広がるリスクが高いためワクチン接種を躊躇っている方々には接種の有用性を改めて考えて欲しいと思います。



免疫学者の視点から常に有益な情報を発信されている阪大の宮坂昌之先生のFBに興味深い論文が紹介されていました。Science Advancesというレベルの高い雑誌に掲載された報告で、満員電車における感染リスクに対するマスクの効果を示しています。
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abg3691
波間に考える今後の展望

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(宮坂昌之先生のFBより引用)
基本的な感染予防対策の一つであるマスクの有用性は数多くの論文で指摘されています。ソーシャルディスタンスを適切に保ちマスクを着用すること、更に感染力の強いδ株に対しては換気を十分に行う事が大切です。




今月の治療指標の達成度です。
波間に考える今後の展望

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今年は10月中旬まで暑い日が続き食欲と栄養指標の回復がやや遅れていると感じます。食欲の秋で例年上昇傾向となるカリウムも低い方が多く、透析後のカリウムを維持するため敢えて透析効率を落とすケースがある一方で逆の調節が中々出来ていません。血清リンに関してはむしろ高めの方が増えてきました。検査説明の回診で食事内容についてお聞きすると、涼しくなり鍋物が増えて練り物の接種が増えたケース、季候が良くなり屋外のBBQでソーセージ類を沢山食べていたケース、蛋白質摂取を増やそうと毎朝にシラスを食べ始めたケースなど様々な背景が見えてきました。加工肉やちくわ・蒲鉾などの練り物は製造の過程でリン酸塩を含む添加物が使用されます。そしてリン酸塩のような無機リンは消化管から血液への吸収効率が90%以上と高くわずかな量でも血液中のリン濃度上昇に影響します。シラスは小さいながら魚そのものですから骨を含みます。骨はカルシウムとリンの塊であるためリンの排泄が出来ない腎不全の患者さんが多量に取ると血液中のリンが高くなります。同様の理由で鮭缶や鯖缶の中骨もリンが高くなり易い食材です。添加物由来や骨由来など栄養にならないリンはなるべく回避して、純粋な蛋白源である肉や魚をしっかり摂ることをお勧めしています。



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植えたことも忘れていた・・・サフランが咲いていました。

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イチイの実


波間に考える今後の展望
(忽那賢志先生の記事から引用)
新型コロナ感染症の第6波はおそらく来るでしょう。しかしわが国ではワクチンの高い接種率を早期に達成しました。今後のブースター接種と治療薬の登場により致死率は低下し行動制限は逆に縮小してゆくはずです。次の波がまだ来ていない今こそ十分注意しながらゆっくり経済活動を再開する時期に思います。

須坂 腎・透析クリニック


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Posted by Kidney at 15:46│Comments(0)ひとりごと
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