2022年11月29日

混沌とする三年目の霜月

混沌とする三年目の霜月
クリニックの中庭の木々も徐々に葉を落とし常緑樹の存在が目立つようになりました。その中でもひときわ目を引くのが寒椿の花です。庭の中央に近い位置に白い寒椿の株があり今季の花付きは良い様子です。



混沌とする三年目の霜月
周囲には赤い寒椿が何本があるのですが、此方は中々株が太らず細身の枝に赤い花を咲かせます。


混沌とする三年目の霜月
藤の葉も黄色くなり程なく落葉です。



混沌とする三年目の霜月
既に落ち葉の絨毯が出来上がっていました。


透析施設では少なくとも月1回、透析前後の採血と透析後のレントゲン撮影がワンセットとなった定期検査が施行されます。採血全国的には中2日明けの初日の検体を用いることが標準化されているため、検査週の月曜日および火曜日に検査が行われます。当院ではレントゲンは撮影日に読影され心胸郭比、肺野の状況からドライウェイトの評価と調節をします。
混沌とする三年目の霜月
当院の定期検査レポート
検体検査は外注のため結果が揃うのは2日後です。従って検査週の水曜日からデータ解析が始まりその結果を以て透析条件や次の定期処方の変更指示が出されます。当院では採血項目の内特に栄養や透析条件の設定に深く関与する項目をピックアップし、先のレントゲンの結果とともに1枚のレポートにまとめます。前回からの変更点や経時的な指示の流れが瞬時に把握出来るため、回診での結果説明や指示変更に重宝しています。現在のところレポートは手書きですが何れ各種ソフトと連携をはかり電子化を検討しています。ただし現状のデバイスで複数の情報を1度に表示し、過去のデータにも容易にアクセスできるプラットホームの構築は容易でなく、電子カルテを採用しながら透析記録のコアな部分はアナログ的手法を採らざるを得ないのも事実です。




2019年11月に中華人民共和国湖北省武漢市で初めて確認され、2020年に入りパンデミックを引き起こした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)、今月で3年が経過しました。この間ウイルスの変異、ワクチンの開発及び実用化と紆余曲折を経て現在に至りますが混沌とした状況は続いています。
混沌とする三年目の霜月
(NHK特設ページより)
長野県における人口10万人あたりの感染者数の推移をみると、十分に低下しないまま感染者が増加に転じ既に第7波のピークに迫りつつあります。行動制限が無いことを感染予防をしなくても良いとはき違えた行動様式が影響しているように感じます。インフルエンザの10-70倍の死亡率を持つ感染症がインフルエンザ並みに流行している事実が十分に理解されていない背景には、年代によるまたは持病を持つか否かによる重症化及び死亡リスクの乖離があるのかもしれません。


混沌とする三年目の霜月
(朝日新聞digital より)


混沌とする三年目の霜月
高齢者ほど致死率が高く、生活習慣病や慢性疾患はリスク因子となります。感染が爆発的に広がればほとんどが軽症者と言えども多リスク患者の死亡率は上昇し、治療にあたる医療機関も逼迫するでしょう。

混沌とする三年目の霜月
(長野県HPより)
実際に病床使用率もかなり上昇しています。新型コロナウイルスに感染すると軽症で推移しても血管に生じた炎症により脳血管疾患、心血管疾患を合併し予後不良となる事例も多く報告されています。多くは持病持ちの高齢者にみられますが若年者でもbrain fogや遷延化する倦怠感などlong-COVIDと呼ばれる後遺症が、小児においても多系統性炎症症候群といわれる厄介な後遺症が一定の割合で発生しています。公に行動制限の発令が無くても感染数が拡大し続ければ心理的に行動が制限され社会活動の停滞につながることは容易に想像できます。私たちは新型コロナがパンデミックを起こす以前から「手洗い・うがい・人混みでのマスク・小まめな換気」といった感染予防を行っていました。何ら特別なことではありません。罹患すれば損になる嫌な感染症が流行している真只中ですから、「かからないように、ヒトにうつさないように」十分配慮しつつ日常生活を送る事が求められていると思います。


混沌とする三年目の霜月
(NHK特設HPより)
さらにワクチン接種により一定期間の感染回避、長期に渡る重症回避、後遺症の軽減、感染した場合のウイルス排泄量の減少など、個人の防衛にも社会的な防衛にも十分なメリットが得られます。


混沌とする三年目の霜月
(宮坂昌之先生のFBより)
「ワクチンは相変わらず有効です。特に「12歳以上で二価ワクチン追加接種をした場合、未接種者に比べて、死者数が14.9分の1に減少、感染者数が3.2分の1 に減少しています」。つまり、確かに以前よりは感染予防効果が落ちていますが、二価ワクチンで追加接種をすれば、感染リスクが約3分の1,死亡リスクが約10分の1以上と、ともに明らかに低下しています。」
いまだ新型コロナワクチンに懐疑的な意見を耳にしますが信頼性の高い科学的なデータを見る限りその有効性は証明されています。なるべく多くの人がワクチンを接種し集団免疫を高めることは大変重要と考えます。



今月の治療指標の達成度です。
混沌とする三年目の霜月

混沌とする三年目の霜月
例年寒くなると血清リンが急上昇するケースが散見され、追随してPTHも上昇する場合があります。全体的には血清リンの平均値に上昇はありませんがインタクトPTHはやや上昇しました。この時期に血清リンが上がりやすいのは、寒くなり鍋物の摂取が多くなることと関連している可能性があります。鍋の具として練り物の摂取が増えて添加物経由の無機リンが影響するためです。更に年越しでは保存の効く食品として加工品の摂取が更に増えます。今年は1月の血清リン値が最も高い値でした。蛋白の摂取でも血清リンが上昇するため、蛋白摂取を十分に確保するためには栄養の無い無機リンの摂取はなるべく控えることが重要です。透析による除去も十分確保したいところですが、カリウムが低いため透析効率を上限までアップ出来ない場合もあります。その意味でもバランスの取れた食事が大切と言えます。



混沌とする三年目の霜月
コムラサキも葉が落ちて晩秋の佇まいとなりました。


混沌とする三年目の霜月
雨に濡れた紅葉、この葉が落ちる頃には雪景色となるでしょう。


2022年も残すところ1ヶ月、来年はコロナパンデミックの出口がどの程度見えてくるのでしょうか。パラメーターの一つは国民一人一人の考え方と行動に思います。

須坂 腎・透析クリニック




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Posted by Kidney at 15:18│Comments(0)ひとりごと
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