2023年03月26日

サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり

サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり
ソメイヨシノよりも早く開花する彼岸桜。
3月後半になり気温の高い日が増えてきました。早春の花芽が動き出し景色も次第に春らしくなりますが、時同じくして里山には花粉の霞が漂い、目のまわり鼻のまわりに少々厄介な春の風物詩が発生します。



サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり
最も早く開花するのはサンシュユ、この角度ではサンシュユの黄色い花の奥に彼岸桜のピンク、更にその奥にハクモクレンの白が連なります。



サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり
こちらはハクモクレンの側から見た構図、数日続いた高い気温であっと言う間に開花しました。



サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり
足許に目を移すと水仙とクリスマスローズ。かなり早い時期から開花していましたがいよいよ盛りです。



サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり
ムスカリも花茎が伸びてきました。



3月の透析定期検査は21日の火曜日が祝日のため前倒しして13日の週に行いました。今月はインタクトPTHの測定月のため結果を翌週の定期処方に反映させるため先送りではなく前倒しとしました。その結果、本来別の週に行う「定期検査の解析」「定期処方入力」を同時に行うことになり仕事量が猛烈に増えました。更に悪いことに花粉症症状のピークに仕事量の極大日が重なり散々でしたが、PTHの変化量が大きいケースが散見されておりリアルタイムに治療内容を修正出来たことは大きな収穫でした。



サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり
さて、昨年12月から解説を始めた検査レポートの4回目はカルシウム、リンが関与する項目です。これらの病態は慢性腎臓病におけるミネラル骨代謝障害(CKD-BMD)として独立した疾患概念が設定されるほど重要な位置付けになります。骨は硬く成長すると形状変化もしないことから代謝とは無関係に思われるかもしれません。しかし骨自体がカルシウムやリンを大量にプールし血液との間で積極的なやり取りを行っています。カルシウムやリンは消化管から吸収され血液に入り余剰分は腎臓から排泄され、それらの調節を甲状腺の裏側に通常4腺存在する副甲状腺で産生されるホルモン(PTH)がコントロールしています。消化管でカルシウムが吸収される際にビタミンDを必要としますが、そのビタミンDは肝臓と腎臓で代謝を受けて初めて活性型となり効力を発揮します。PTHは腎臓に働きカルシウムの吸収とリンの排泄を促すほか、骨に働きカルシウムを積極的に血中に取り込みます。このためPTHは血中のカルシウム濃度を維持するホルモンと言えます。

しかし腎機能が低下すると活性型ビタミンDの産生が低下し消化管からのカルシウム吸収も減少するため血中カルシウム濃度は低下しやすくなります。一方で腎臓からのリン排泄が低下するため血中のリン濃度は高くなります。低カルシウムも高リンもPTHの分泌刺激となるため腎不全が進行するとPTHの濃度が高まり二次性副甲状腺機能亢進症を来します。PTHの濃度が上がること自体は血中のカルシウム濃度を上げリンの排泄を促すことになり合理的な変化ですが、作用対象である腎臓が十分に機能しないためカルシウム・リン代謝が破綻します。二次性副甲状腺機能亢進症は透析になる前の段階から始まっており、腎臓内科の外来ではこの段階から治療介入を行います。透析導入後は生命予後に与える影響が高い順にリン>カルシウム>PTHでコントロールをします。血液中のリンは経口摂取内容に大きく影響されます。リンは蛋白質の摂取過剰により上昇しますが蛋白質に含まれる有機リンの吸収効率は50%程度と低くむしろ99%が吸収されてしまう添加物由来の無機リンで上昇するケースが多いように感じます。無機リンの摂り過ぎは加工肉や練り物、プロセスチーズなどが原因食となるほか、骨ごと食べることの出来る鮭、鯖の缶詰や小魚の摂取過剰も原因となります。リン高値は透析患者の生命予後を悪化させますが、蛋白質制限によるリンのコントロールよりも蛋白質制限をしないリンのコントロールの方が長生きできることも明らかになっています。そのためには如何に無機リンを回避して純粋な蛋白質の摂取量を確保することと、十分な透析によるリンの除去の両者が必要です。消化管でリンを吸着し吸収させないまま便とともに排泄させるリン吸着薬の使用も有効です。以前はカルシウム製剤をリンの吸着薬として利用する方法しかなかったため、リンが下がる一方で高カルシウム血症を招くリスクもありました。現在ではカルシウムを含まないリン吸着薬が何種類も使えるため治療の選択肢が広がりました。透析前でリンは6mg/dl以下、可能であれば5.5mg/dl以下が目標です。

リンが高くなると前述のようにPTHも上昇します。初めのうちは副甲状腺のホルモン産生細胞がランダムに増加する「過形成」の状態であり、薬物療法に良く反応します。しかしホルモン産生刺激が長期に渡り存在すると次第にホルモン産生細胞が腫瘍性に増加する「腺腫」に変化し薬物療法が効きにくくなります。そうなると通常米粒ほどの副甲状腺は直径1cmを越えるようになり外科的切除が必要になります。なるべく薬物療法が有効な過形成のうちにリンをコントロールすることが大切です。実際のPTHのコントロールはリン値の是正に始まりそれでも上昇する場合はカルシウムが正常から低い場合にはカルシウムを上げつつPTH産生を抑制する活性型ビタミンD製剤を、カルシウムが高い場合にはカルシウムを下げつつPTHを抑制するカルシウム受容体作動薬(Calcimimetics)を選択しますが併用することもあります。このように透析患者では働かなくなった腎臓の代わりに薬剤を使用してカルシウム・リン・PTHの調節を精密に行っています。故にカルシウムやビタミンDを含むサプリメントの使用は避ける必要があります。



今月の治療指標の達成度です。
サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり

サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり


年越しの影響で1月にリンが高くなったケースや高カルシウムを回避するため敢えてビタミンD製剤を減少したケースなどでPTHが急上昇しました。その結果平均値もバラツキを示す標準偏差も高くなっています。全てのケースで注射薬、内服薬の調節を行い変化量の特に大きかったケースでは来月の臨時でPTHを測定し治療介入を行う予定です。それ以外の透析医会の項目は何れも90%以上の達成率を維持しています。


サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり
新型コロナウイルス感染症は2023年5月8日から現在の2類相当から5類に引き下げられる予定です。ウイルス自体の毒性は変化していませんが、社会経済的な視点からやむを得ぬ措置とも考えられます。重症化リスクの高い高齢者や持病のある方は引き続き基本的な感染予防対策を行い、リスクの低い方はパンデミック前の生活様式に戻ることになるでしょう。当院では院内でのマスク着用、定期的な換気を今後も継続します。



サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり
カタクリの花、ひっそりと咲く姿が[魅力的です。



サクラ咲き、花粉漂う弥生のおわり
ユキヤナギも開花し始めました。花が終わる頃に防虫剤を撒かないとあっと言う間にアブラムシだらけになってしまいます。


4月1日で当院は10周年を迎えます。現在100名を越える方の透析治療を担う一方で180名近い患者さんとご縁がありました。患者層の高齢化は今後も進みますが10年間で経験したノウハウを活かして個々に最適な治療を展開出来るように一層精進したいと思います。


須坂 腎・透析クリニック


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Posted by Kidney at 16:31│Comments(0)ひとりごと
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