2023年12月25日
令和5年師走の下旬〜季節に追いついた外気温
2月も中旬を過ぎてやっと冬らしい気温になりました。今年の降雪は昨年より遅め、南天の葉の上の雪も昼過ぎには溶けてなくなりました。
北陸地方では交通が遮断されるなど被害が出た今回の冬将軍、幸い此方では数センチ積もるだけの雪でピークを越えました。
12月初旬、名残の紅葉。夜のヤマモミジ。
雨後のサンシュユの実、今年は豊作です。
白樺とユキヤナギの紅葉。
透析患者と高リン血症
先月は低リン血症に付いてふれ、ミネラルの過不足と心電図変化について説明しました。実際のところ血清リンに関してむしろは高くて調節が必要なケースの方が多いと言えます。腎臓が正常に働いていれば余分なリンは尿中に排泄されて血中濃度が上昇することはまずありません。カルシウムやリンは腸管からの吸収、腎臓からの排泄、両者の貯蔵庫とも言える骨での代謝の三つ巴で調節されています。腎機能低下によるリン排泄の低下はこれらの相互作用に関わる様々なホルモンに影響し次第に調節のバランスが崩れて行きます。
高リン血症が困る理由
・異所性石灰化:動脈硬化、心臓弁膜症、関節・皮膚の石灰化
・二次性副甲状腺機能亢進症の促進:骨が脆くなる(腎性骨異栄養症)
腎機能が一定以下となった透析患者では排泄されない分だけリンが体内に溜まりやすくなり、高リン血症は全身の様々な組織に異常な石灰化を引き起こします。その結果、動脈硬化の進行、心臓弁膜症の悪化、関節痛や可動域制限、皮膚の頑固な痒みが生じます。また高P血症を放置するとカルシウムとリンのバランス調節に関与する副甲状腺ホルモンの分泌が亢進し骨からミネラル成分が過剰に溶け出て骨が脆くなる「腎性骨異栄養症」を誘発します。
リンを上げないために
1. 効率の良い透析を行う
透析によるリンの除去には限界がありますがなるべく効率の良い透析を行うことで除去量をアップし、食事制限を緩やかにすることが出来ます。
2. 便秘を回避する
便秘の改善によりリン値が低下する報告もあり、排便コントロールも考慮すべき項目です。また後述するリンの吸着薬の中には便秘になりやすい薬もあるため吸着したリンを速やかに体外に排泄させる意味でも重要です。
3. リン吸着薬を使用する
リンは食事に含まれており消化管で吸収されます。リンが吸収される前に捕まえて(吸着)便とともに体外に排泄させる薬をリン吸着薬と言います。血中カルシウム濃度に影響するカルシウム製剤と影響しない非カルシウム製剤に二分され、透析前のカルシウム濃度を加味してどちらを使用するかまたは併用するかを決めます。薬により食直前に内服するものと食直後に内服するものがあります。
4. 食事に注意する
リンは主に蛋白質の摂取で上昇します。一方で蛋白質は筋肉や血液を構成する大切な成分でもあり必要量をしっかりと摂取することも大事です。リンは大きく分けて二つあります。
1. 有機リン:肉や魚、卵など蛋白質の構成成分
2. 無機リン:発色剤、防腐剤、増粘剤など食品添加物の成分
有機リンの消化管からの吸収率は50%前後ですが無機リンは90%以上と高率に吸収されます。従ってなるべく無機リン≒添加物を含まない蛋白質の摂取が望まれます。
加工肉であるウインナーやハムはどうしても含有リン値が高くなってしまいますが、ウインナーを切ってから茹でるとリンが湯に溶け出るため摂取リン量を減らす工夫になります。この場合ゆで汁は飲まないように。またインスタント麺もリンが使われていますが、麺のゆで汁は捨てて別に用意した湯でスープを仕立てることでリンを押さえることが可能です。加工肉や練り物は食べていけない食品では無く、量を少なく、また摂取するリン量を抑える工夫をしていただくと考えてみては如何でしょうか。血中リン値が上限に近い場合はヨーグルト、牛乳、プロセスチーズはやめて置いた方が無難です。むしろリンが低値の方は食事の中に組み入れても良いでしょう。
更にビールや清涼飲料水、栄養ドリンクといった飲料は色の濃いものほど含有するリン値が高い傾向にあります。清涼飲料水の種類によっても含有するリン値は随分違うため注意が必要です。
今月の治療指標の達成度です
透析医会、当院独自指標とも大きな変化はありません。年末年始が近いせいかリンが急に高くなったり、週半ばの体重増加急激に増えたりするケースが散見されました。たまに羽目を外すのは良いのですが、くれぐれも重なり継続しないようにお願いしているところでもあります。
青空に映えるサンシュユの実。
逆光に映える寒椿
令和5年(2023年)もあとわずか、残暑から続いていた季節外れの気温もやっと時季に追いついてきたようです。降雪量は少なめを希望します。
令和6年辰年も皆様にとってご多幸でありますように。
須坂腎・透析クリニック
Posted by Kidney at 10:38│Comments(0)
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