2019年03月29日
鬼門の木の芽時

早春は木の芽や花芽が動きはじめ、モノクロの冬から春色に切り替わる視覚的にはワクワクする時期です。一方で日中初夏のような気温の日が続いたかと思うと冬に逆戻りして雪も舞うなど、寒暖の差が大きく心身にとってストレスフルな時期でもあります。

紅紫色のクリスマスローズと雪。

雪とスイセンのつぼみ。
3月初旬の写真、冬と春が同居しているようなこの時期ならではの光景です。4月にソメイヨシノが開花してから降雪を記録した年もあるため気温が落ち着くまでは油断出来ません。寒い時期よりも寒暖差の大きな季節の移り変わりの時期の方が体調不良を来す方が多い印象であり、体調管理にとって「木の芽時」は鬼門と言えるかもしれません。

庭の隅に毎年顔を出すカタクリ、今年も3株花を付けました。4月になると近くでセイヨウカタクリが黄色の花を付けます。

3月後半、雪のないクリスマスローズの花。

スイセンも開花しました。

今年も来ました「ツグミ」

紋様を比べると去年来た個体と同一の様です。

何だか威嚇しています。
今月東京都下の病院で透析患者が治療継続の中止を意思表示し結果死亡した事が大きく報道されました。血液透析において多量の血液を安全かつ効率的に確保する透析用の血管(シャント、AVF、報道によっては「分枝」と表現)が必要であり、それは患者にとって透析を継続するための命綱となります。人為的に血流を変更するためトラブルも生じやすく、設置後5年で開存率は5割程度と頻回に治療介入の必要性があります。
その血管が使えない状況で患者に透析継続または中止の選択を求めることが適切なのか、この点に違和感を感じました。透析用の血管が閉塞し治療継続が危ぶまれる状況は患者の心理にも少なからず影響を与えます。不安定な心理状況下で生死に関わる判断を求める行為は、患者の自己決定権を真に尊重しているといえるのか、それが違和感の正体です。 透析用の血管を再建するか否かは後で考えるとして、一時的に血管カテーテルを挿入して当面の治療を継続しながら時間をかけて結論を導く方法も取れたはずであり、私ならばそうしていたと思います。しかしその時点での患者の意志が強く頑として医療を受け入れない状態であったならばやむを得ない側面も出てきます。情報が限られておりこの点については私見の域を出ません。
報道によれば透析中止の意思の確認に複数の医師と患者本人と家族が関わり、書面をもって可視化したevidenceもあり手順は間違っていないと思われます。しかし一連の意思決定の流れとその後の対応が患者にとって「最善」であったかは別問題で検証の必要があると考えます。
学問としての医学はevidence basedが基本です。一方で医療はevidenceを含むscience(知識)に基づき最善を提供するartが必要とされます。

果物好きのムクドリ。

こちらは果物に加えて花の蕾も食べるヒヨドリ。
今月の治療指標の達成度です。


平時と違う年末年始の食生活の影響からか上昇した1月のPTHは低下し、目標の達成度も7%上昇しました。血清リン(P)の達成度は更に上回っていますが、生命予後への関与はP>PTHのためリンの管理が優先されることは合理的と言えます。新規導入患者さんが複数いたため血流量やβ2MG除去率で若干の低下がみられます。後者ではマイルドな膜に切り替えた影響もあり80%を下回っていますが昨年同時期よりも栄養指標は同等、血清Albでは上昇しており長期的にも栄養状態に好影響をもたらしている可能性があります。現在当院では高効率&高性能膜で尿毒素除去効率を最大限追求する群と、高効率はそのままマイルドな膜で栄養状態に配慮して治療を行う群に大きく二分されますが、いずれも条件は細かく設定されテーラーメイドの治療となっています。
また基本となる透析量の維持には高血流による高効率透析が必要不可欠であり、それには日頃からのシャント管理が大切です。患者さんには日頃からシャント音の聴取を積極的に行ってもらい、音の変化がある場合はすぐにエコーで血管の評価を行います。エコーで狭窄が疑われる場合は元より、定期検査において透析効率が変動の範囲を超えて低下した場合や、体外循環時の圧異常、脱血不良が継続した場合は血管造影を施行し解除すべき狭窄があれば即日インターベンションを施行します。インターベンション後は定期的に血管造影を行い狭窄の早期検出につなげています。

ヒヨドリ、ムクドリはもうすぐ顔を見せなくなりますが、スズメとキジバトは通年のお客様です。

ムスカリも顔を出してきました。

コヒガンサクラが咲き始めました。
須坂 腎・透析クリニックは来週から7年目、高いクオリティとともに最善を提供することを目指しスタッフ一同研鑽を続けたいと考えます。
Posted by Kidney at 15:03│Comments(0)
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