2023年09月26日

リコリスと体重増加に見る残暑の影響

リコリスと体重増加に見る残暑の影響
毎年9月中旬になると花茎が地面から顔を出し、あっというまに伸びて美しい造形の花を咲かせる彼岸花、園芸名リコリス。


リコリスと体重増加に見る残暑の影響
日陰の個体は概ね例年通りに開花しましたが毎年真っ先に開花する黄色のリコリスは未だ沈黙しています。直射日光が当たる場所のため高い気温が花茎の分化・成長に影響を与えているのかもしれません。それほど今年の夏は暑かったのかもしれません。


リコリスと体重増加に見る残暑の影響
一方で小紫は順調に色付き始めました。


確かに今年の気温は過去に比べて飛び抜けて高かった様子です。気象庁が発表した「日本の夏の平均気温偏差」は+1.76でこれまで最も高かった2010年の1.08を大幅に上回りました。
リコリスと体重増加に見る残暑の影響
「ウェザーニュース」より


リコリスと体重増加に見る残暑の影響
「ウェザーニュース」より
11月までの3ヶ月の平均気温も高い状態が予想されています。暑い日が続いたためか9月に入っても飲水量が多く透析の除水調節をしなければならないケースが多かった印象です。

末期腎不全では十分な尿量を確保出来ないため透析により過剰な水分を除去します。その目標となる体重をドライウェイトと言います。またドライウェイトが適切でも透析間の体重増加が多いと血圧が乱高下してしまいます。除水目標としての「体重」透析間の「体重」増加、このふたつの「体重」という言葉をきちんと分けて考える必要があります。


透析にまつわる二つの「体重」

透析患者の
・血圧が高い
・浮腫がある
・レントゲンで心臓が大きい(心胸郭比が大きい)
・体内の水分量=心臓の負担を現す数字(hANP)が高い

これらの場合「ドライウェイトを下げましょう」と提案します。箇条書きにした項目は何れも体内の水分量が相対的に高い状態で生ずるために、その改善には体内の水分量を適切に下げる必要があります。では透析患者における体内の水分量はどのように規定されているのでしょうか、それを決めるのがドライウェイト(乾燥体重、基準体重)です。ドライウェイトは体内の水分量が過不足ない状態の体重と規定され透析終了時にその体重になるように除水します。

リコリスと体重増加に見る残暑の影響

さて、血液透析では本来腎臓が果たす「尿を作る」行為をかわりに行います。
「尿を作る」とは、
1. 体内に貯留した水に溶ける老廃物を尿として排泄する。
2. 体内に貯留した余計な水分を尿として排泄する。

ことを意味します。末期腎不全では腎機能が一定レベル以上に低下し「尿を作る」事が出来なくなるため、血液透析により血液中から直接尿毒素と余分な水分を除去することになります。この「余分な水分の除去」が1回あたりの透析で除去すべき水分の総量「除水量」です。「除水量」は概ね透析間の「体重増加」量に相当し、飲水量がその大部分を占めます。この時、どれだけ除水するか決めるために必要なものが「ドライウェイト」になり、ドライウェイトからの増量分だけ除水することになります。

リコリスと体重増加に見る残暑の影響

今季の様な酷暑の影響で食欲が低下すれば当然痩せます。痩せるとは不足した栄養を補うため体内の脂肪や筋肉が栄養に転化され、それらの重量が低下することを言います。腎臓が正常に機能していれば低下した筋肉や脂肪の重量分に相当する水分は体外に自動的に排泄されます。透析患者ではこの自動調節が働かない、つまり体重がドライウェイトに固定されているため、痩せて低下した筋肉や脂肪の分だけドライウェイトも下げないと相対的に水分過剰となってしまいます。従ってドライウェイトを下げると言うことは体水分量を下方修正することになります。言い換えれば除水の目標値が下がるということです。

リコリスと体重増加に見る残暑の影響

ドライウェイトも除水量を規定する体重増加も同じ「体重」という言葉を使うため、ドライウェイトを下げることを提案すると飲水量が多いと指摘されていると勘違いされてしまうケースが多いと感じます。あくまでも飲水量が関係するのは透析間の体重増加であり、飲水コントロールが適切な場合でも経口摂取が低下すれば痩せた分だけドライウェイトは下がることになり、逆に太ればドライウェイトを上げないと体水分量の相対的不足から血圧は下がり気味になってしまいます。
また、ドライウェイトを下げると痩せて元気がなくなると訴える方も時折みかけます。「体重の設定を下げる」=「痩せる」と捉えてしまっていることが原因です。これまで述べてきたようにドライウェイトを下げるのは「痩せてきた結果」に対する調節であり、変化するのは体内の総重量の内水分の重量だけなので筋肉や脂肪の量はドライウェイトの下方修正では減ることは決してありません

水分の取り過ぎによる「体重」増加=除水量の増加と適切な体水分量野目安である乾燥「体重」=ドライウェイトは正しく分けて考えることが大切です。


今月の治療指標の達成度
リコリスと体重増加に見る残暑の影響

リコリスと体重増加に見る残暑の影響



透析医会の指標では血清Pのコントロールが良好な一方でiPTHが上昇するケースが散見されました。極端な上昇を見せた数例では即時使用薬剤を変更・調節するなど対策済みです。当院独自指標では朝夕涼しくなってきたためか栄養指標の改善がみられました。
来月より定期検査の項目を見直しいくつか変更する予定です。体水分量の指標となる透析後hANPは2ヶ月に1回でしたが毎月測定とします。血清Mgは低めの方が多く、積極的な補正を開始するに当たり2ヶ月に1回と測定頻度をアップします。中分子物質の除去量の指標となるβ2MGは3ヶ月に1回に減じます。


リコリスと体重増加に見る残暑の影響
夏の花、百日紅は旬を過ぎて名残の時期です。


オミクロン株の派生型「XBB1.5」に対応する新型コロナワクチンの今季接種が開始されています。ウイルスによる重症肺炎の頻度は減りましたが、高齢者や持病を持つ方では未だ季節性インフルエンザ以上の死亡率であり、その季節性インフルエンザの数倍の感染力を保持することを考えると個人個人のリスクに応じた対策が必要です。mRNAワクチンは
1. 罹患回避
2. 重症化回避
3. 後遺症回避

何れにも有効であることが証明されており高リスク者や医療関係者は基本的に接種が必要と考えます。当院では10月初旬にインフルエンザワクチン接種を、接種券が届き次第10月中旬までには新型コロナワクチンの7回目接種を予定しています。


リコリスと体重増加に見る残暑の影響
ミニバラ

今夏は7月が夏の「はしり」、8月が「さかり」、そして9月は「名残」と濃厚かつ散々に味わえて少々食傷気味です。これではますます「秋」が短くなり紅葉も中途半端に冬入りしそうです。四季の構成がずいぶん曖昧になってきました。いずれにせよこれからが季節の変わり目、体調管理に留意したい季節です。

須坂腎・透析クリニック





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Posted by Kidney at 16:14│Comments(0)ひとりごと
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